復活を期す村澤明伸「自分の走りを高めたい」 苦悩の2年を超えて新たな挑戦の年に

加藤康博

目指すは「一歩の効率性を高めること」

1万メートル27分台で走ったイメージは残っているものの、今は新しい走りでタイムを上げていくことを目指している 【スポーツナビ】

 社会人1年目の13年には約2カ月、米国アリゾナ州フラッグスタッフでトレーニングを行った。拠点となったバッファローパークは標高2000メートルの高地である。復調してきた今、再度、米国に渡ってトレーニングを行う考えはあるのか。そう問うと、興味は失っていないものの、すぐに行く予定はないと応えた。

「今は違う方向から走りを変えようとしています。もともと自分は左足を軸にして走るタイプでしたが、故障したことによりそれが右足に変わり、同時に右足でも蹴ろうとしてバランスを崩しました。それを自分本来の形に戻すと同時に、右足を軸にして走れるようにしているんです。目指しているのは一歩の効率性を高めること。それで全体の走りが変わってくれば面白いなと思っているんです」

 3年前に1万メートルで27分台を出した時のイメージは頭に残っている。だが思うように走れなかった期間が長かったこともあり、それも当時に感じたものとズレてきているはずと話す。今は新しい走りで新しい感覚を積み上げながら、トラックでのタイムを上げていくことを目指している。

「マラソンを走りたいという思いはあるんですが、以前の自分を超えないとマラソンへはいけないという思いがあります。自己ベストを更新した時に、次にどこを目指すかは自分でもまだ分かりません。それは自分でも楽しみな部分でもあります」

 高い負荷をかけてトップスピードを高め、同時にそれに耐えられる体づくりを行い、そこから距離を伸ばしていくというトレーニングに米国で触れ、今もそうした練習は行っている。だが同時に日本で一般的に行われている長い距離で足づくりを行い、そこからスピードを高めるアプローチにもヒントはあるはずと考えるようになった。今はその両方を取り入れる方法も模索中だ。

「米国でスピードを中心に鍛えている選手が、今後どういうふうに距離を伸ばしてマラソンを走れるようになるか。そこも注目していきたい」

 意識の上ではすでにマラソンも視野に入れている。

東京選手権で優勝し3年ぶり日本選手権へ

 4月18日に行われた東京選手権1万メートル。参加選手が少なく、ペースも上がらなかったため、タイムは29分43秒28にとどまったが、優勝を果たした。28分48秒00の参加標準記録Bをすでに突破しているため、これで6月に新潟で行われる日本選手権への出場権を手にした。今後は東日本実業団選手権(5月16日、17日)、そして記録を狙うレースを一本挟んで、3年ぶりの大舞台へ挑む予定だ。

「正直、27分台で走った時の状態にはまだ遠いと思っています。この2年、レベルの高いトラックレースを走っていないので、その緊張感や流れを経験したいというのが今の一番の思いです。それを経験すれば以前の感覚も戻ってくると思いますし、何より刺激になります。そのうえで自分の走りをまた高めていきたい。今はそれだけを考えてやるつもりです」

 高校、大学と華やかな舞台を歩んできた村澤にとって、今年は新たな挑戦の1年になる。その走りがどう変わっていくかに注目したい。

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著者プロフィール

スポーツライター。「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。コピーライターとして広告作成やブランディングも手がける。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

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