どうなる? ダービー&オークス 対照的な桜と皐月で見えてきたもの

消えた無敗馬

一敗地にまみれたルージュバックの巻き返しはある? 【スポーツナビ】

 対照的な決着の仕方をした桜花賞と皐月賞ですが、二冠目に向けての相似している点もいくつかあります。

 桜花賞では圧倒的1番人気に支持されたルージュバックに、レースレコードでクイーンCを制したキャットコイン、トライアルのフィリーズレビューを制したクイーンズリングの3頭。そして皐月賞では弥生賞を制してやはり1番人気に支持されたサトノクラウンと、スプリングS勝ち馬キタサンブラックの2頭。この5頭はそれぞれ無敗で大一番に臨み、ことごとく敗れました。それも連対すら果たせず、馬券の対象になったのも皐月賞でかろうじて3着のキタサンブラック1頭のみ、という結果に終わったのです。

 無敗馬が複数いるということは、大一番を前にして、未対戦の馬が複数いるということに他なりません。負けていない馬同士が、初めて対戦することになるわけです。まずそこに、大きな落とし穴があります。

 そうですねえ、無敗馬と聞くとどんなイメージを持つでしょうか。人間社会で言うと、さしずめ勝ちっぱなしのエリート、かな。そこにはなるほど真っ直ぐな強さが感じられますが、同時に、挫折を知らないことの危うさや脆さも感じてしまいます。

 そんな相反する二つの側面を持ちながら、人気を背負って戦う馬が複数いれば、想定外の結果になっても不思議はありません。勝つのは一頭で、負けを知らなかった馬たちが、初めて傷を負う、という重要な経験をするのですから。

 つまりは、広義の“経験不足”の馬が多かった。それがこの春のクラシック戦線の特徴のひとつだったと言えるかもしれません。まあそうだとしても、牡牝ともに無敗馬が全く居なくなる、という事態までは、正直、想像していませんでしたが。

 ともかくも、挫折を知った逸材たちが、その経験を糧に這い上がってくる可能性は少なくないわけで、一冠目の結果が二冠目に直結するかちょっと怪しい、と考える理由のひとつがこれ。一方で、挫折を知らなかった甘ちゃんが、ひとたび躓いた時、すぐに立ち上がれるものなのかどうか、と不安になる部分も否定できず、そのあたりの見極めが、2冠目を予想する時の重要なポイントになるのではないでしょうか。

もうひとつの対照的な結果

キタサンブラックも初めての敗北を糧に一回り成長するか 【写真:中原義史】

 ところで、ではどうして今年、牡牝ともに無敗馬が複数頭いたのでしょうか。

 これについては、先月のコラムで触れた自ブロック制も関係している可能性があるのですが、各陣営が出走権を得るのに必要な賞金を稼ぐために、レースを使い分ける傾向が強まったから、ではないかと推察されます。年々2歳戦の重賞路線が充実していることも、そのことを強力に後押ししています。

 その是非はここではさておくとして、各陣営が相手関係を考えてレースを使い分けようとした時、従来なら重要なステップと位置づけられていたレースを必ずしも選ばなくていい、という考え方がアリになりました。それは耳障り良く言えば、ローテーションが多様化した、ということ。いろいろなアプローチの仕方があって、馬の個性に合わせるのが理想、という考え方になるのでしょうか。

 ところがその結果として、桜花賞は最も重要視されているチューリップ賞組が上位を占めたというのに波乱となり、逆に無敗馬がそれぞれ重要なトライアルを勝ってきた皐月賞では、別路線から参戦した馬が圧勝することになりました。

 このローテーションの持つ意義や捉え方について、今後どう進むのか、いかに判断すればいいのか。

 この点も一冠目である桜花賞と皐月賞の内容は対照的だったことになります。

 レースの中身、そしてローテーションの再考。

 対照的だった桜花賞と皐月賞は、改めて多くのことを示唆してくれています。さて我々は、そこから何を学べばいいでしょうか。

 結論、オークスとダービー。そうやすやすとは収まってくれそうにないようです。これからひとつひとつ提示される情報を、しっかりと精査していきたいと思います。

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著者プロフィール

中央競馬専門紙・競馬ブック編集部で内勤業務につくかたわら遊軍的に取材現場にも足を運ぶ。週刊競馬ブックを中心に、競馬ブックweb『週刊トレセン通信』、オフィシャルブログ『いろんな話もしよう』にてコラムを執筆中。

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