田中将大に垣間見えたエースの可能性 今季初勝利、課題残るも一歩前進
真っすぐが多い理由「そういう日だった」
前回登板よりストレートに勢いがあったが、変化球の制球を欠いた。周囲の雑音をよそに、本人は「少しずつ状態を上げていければ」と冷静だ 【Getty Images】
全97球中、フォーシームが25球、ツーシームが23球が、スプリッターが19球、スライダーが26球、カッターが4球。全82球のうち56球が変化球だった開幕戦と比べ、最速93マイル(約150キロ)を記録した真っすぐ系の多さが目についた。
今春は速球の少なさを盛んに指摘され、開幕戦後には「(真っすぐは)打たれていたから(使わなかった)」と話して、またも物議を醸した。しかし、その根底には“試合ごとに重視するボールが違うだけ”という意図があったはずだ。
「(真っすぐが多かったのは)いろいろな理由があります。日によって割合は違う。今日はそういう日だったということだと思います。ボールの調子によって変わるだろうし、バッターによっても変わるだろうし」
レッドソックス戦後に速球の多さを聞かれた田中は、事もなげにそう返答していた。実際にこの試合で、真っすぐを中心に組み立てられることを少なからず証明してみせた。昨季前半戦でのキレ味には及ばず、失点、四球の多さも不本意だが、それでもこれで周囲の雑音も少しは鳴りやむのではないか。
本人は現状を認識、足元見つめる
ジラルディ監督の言葉通り、昨季前半戦では真っすぐ、変化球がどちらも制球良く決まっていたがゆえに、あれほどの快刀乱麻は生まれた。昨夏の故障離脱を経て、今はまだその位置には達していない。そのため、レッドソックス戦の4回のような球数が必要になってしまうこともある。しかし……戻れないわけではない。
「課題というのは毎試合ありますけど、少しずつ状態を上げていければいい。決してそこまで悪いものではない。細かいところですね。四球が多いですし、そのへんが徐々に良くなってくればというところです」
本人の言葉通り、一歩ずつなのだろう。7年1億5500万ドル(約161億円)という途方もない契約を受け取り、しかも厄介な故障明けだけに、1球1球が注目されてしまう。特に開幕直後は、スモールサンプルの中で周囲は結論を出したがる。しかし、田中本人は自身の現状を認識し、しっかりと足元を見つめている感がある。
宿敵レッドソックス相手に実に203日ぶりの勝利を挙げ、メジャー2年目は本格的に始まった。これから先、さまざまな精度を徐々に上げていけば、再び“エース”と称される位置に戻れるかもしれない。完成形にはまだまだ遠くとも、今季2戦目でその可能性が垣間見えたのは事実なはずである。