リスティ、王座獲り再挑戦も奪取ならず グローリー70kg級タイトルマッチ

遠藤文康

力強いリスティの1RKO予告も…

アンディ・リスティの挑戦を退けライト級王座防衛に成功したロビン・ファン・ロスマレン 【(c)GLORY】

 グローリーシリーズナンバー20はアメリカから一転し中東ドバイで4月3日(現地時間)に開催された。キック組織の世界トップを自称するグローリーにとってファン層の裾野拡大は重要課題。元々キック需要のある中東エリアでの開催は戦略としては大変によいことだ。

 今大会の目玉は70kg級タイトルマッチと王者不在の65kg級王者認定戦の二本立て。前回グローリー19ハンプトン大会でスティーブ・モクソンを1RKOの秒殺で仕留めたアンディ・リスティの狙いは偏にタイトル奪取の一点。
 振り返れば13年のグローリー12ニューヨーク大会では脅威の全試合KO勝利でライト級トーナメントの頂点に躍り立ったリスティは一瞬にして全世界にその名を轟かせた。ペトロシアンをKOしての頂点。まさに誰一人文句のつけようのない70kg級世界トップの出現だった。

 期待を背負って14年のグローリー14ザグレブ大会でデビッド・キリアと王座認定戦を行うも序盤圧倒的優勢ながら粘るキリアを仕留めきれず中盤からスタミナ不足を露呈し最後は逆転KO負けを喫し王座を逸した。あれから1年。王者キリアはロビン・ファン・ロスマレンに王座を奪われ、いよいよ乾坤一擲のリスティの王座獲り再挑戦となった。

 試合前から「あっという間に終わるよ」とうそぶいていたリスティ。「コーチを代えて新たなチーム・マシーンでやってきた。ロビンにはKOで勝っている。彼が僕を3Rファイターと言っているそうだが間違いだ。僕を研究して新たな戦略で向かって来るだろうが無理だろう。僕は5Rファイターに変貌している。そして今回も5Rは必要ない。1Rで全ては終わる」と試合前に述べた。

リスティまたもスタミナ不足を露呈

またもスタミナ不足を露呈したリスティ 【(c)GLORY】

 序盤、探りを入れる両者。リスティの秒殺予告は実現せず。リスティが繰り出す上下自在の攻撃を固いガードでブロックするロスマレンは機を見て大きなフックを返す。序盤の猛攻さえ凌げばリスティは失速するとロスマレン側は確信していた。果たしてリスティのスタミナは改善されているのか? リスティは予想とちょっと勝手が違う2Rからのロスマレンの圧力にとまどった。計算通りに行ってないという表情を見せた。
 中盤にさしかかると打点の低いローでロスマレンの足首周辺のダメージを狙った攻撃を見せたリスティだが瞬時にレバーブローとフック返しリスティをのけぞらせることでそのロー攻撃を諦めさせたロスマレン。細かい攻防がさりげなく発生している。主導権は明確にロスマレン。リスティのインパクトある打撃が鳴りを潜め威力のない手打ちパンチが散見されるようになる。
 そしてキック5ラウンド戦では最重要のキーラウンドとなる4R。明らかにスタミナ不足を露呈したリスティはタイムアップ寸前に捉まり2:35、2:50に立て続けにダウンを奪われる。最終ラウンドには自ら繰り出した前蹴りが受けた反発力でそのまま後ろへ倒れこんでいくリスティ。その姿はまるでキックビギナーのようですっかりバランスが崩れてしまっていた。判定は三者49−44の3−0。ロスマレンが見事に王座を防衛した。

負傷参戦だったことを明かしたリスティ

「もう一度いいます。リスティは3Rファイターです。僕がこの階級で負けた相手はリスティとペトロシアンの二人だけです。今日その一人のリスティへリベンジを果たしました。同時に王座防衛も達成しました。僕に残された課題はただ一つ。ペトロシアンへのリベンジと王座防衛です」
 試合後にロスマレンは力強く語った。一方のリスティは意外なことを語った。
「残念ながら負けました。応援してくれた方々に感謝します。オランダでの最終調整で左腕と左足を負傷し懸命に治療しましたが痛みが取れませんでした。いつもの攻撃ができませんでした。メジャーの舞台でこんな無様はあってはなりません。不甲斐ない試合で申し訳ありません。次の機会があるなら必ず本来の自分を見せたいと決意しています」
 負傷を隠したいため勢い秒殺KOなど強気発言となったのだろう。とはいえそのような調整に至った己の問題点を今一度深く反省すべきである。33歳のリスティにトップコンテンダーとして残された時間は決して多くはない。

 次回5月8日は舞台をアメリカに戻しグローリー21サン・ディエゴ大会。メインはアルテム・レヴィンvs.サイモン・マーカスによる85kg級タイトルマッチ。グローリーはアメリカを拠点としているがアメリカ開催と中東もしくは欧州開催をかわるがわる行う方向性が高まっているようだ。今後の予定が楽しみだ。

GLORY20結果

85kg王座挑戦権を手にしたサイモン・マーカス 【(c)GLORY】

4月3日(金) ドバイ

<70kgライト級タイトルマッチ>
○ロビン・ファン・ロスマレン(オランダ)
(5R判定 3−0※3者49−44)
●アンディ・リスティ(スリナム)

<65kgフェザー級タイトルマッチ>
○ガブリエル・バルガ(カナダ)
(5R判定 3−0※50−46、48−47、49−46)
●モッサブ・アムラニ(モロッコ)

ランキング1位のアムラニと3位のバルガによる空位タイトル認定戦。全ラウンドを通して的確なパンチを当てるバルガと精密な攻めに欠けるアムラニという展開。最終までもつれ込んだもののポイントはバルガが着実に稼いだ。アムラニは欠点が直っていない。頭を下げて相手に突っ込んで行く大振り右フックを繰り出した。これが出たときのアムラニは戦術を失いスタミナが切れた状態である。自分のツボにはまれば滅法強いがギアが噛み合わないと自滅するアムラニ。だから丁寧で正確な攻めの相手が苦手だ。嬉しい初代の栄冠はバルガの頭上に。

<85kgミドル級コンテンダートーナメント 準決勝第1試合>
○ジェイソン・ウィルニス(オランダ)
(3R判定)
●アレックス・ペレイラ(ブラジル)

予想以上の好勝負。序盤中盤とポイントを取ったウィルニスが決勝へ。

<85kgミドル級コンテンダートーナメント 準決勝第2試合>
○サイモン・マーカス(カナダ)
(3R判定 3−0※29−28、29−28、30−27)
●ウェイン・バレット(米国)

互いに当たりが強い攻防が終盤まで続いた。マーカスが決勝へ。

<85kgミドル級コンテンダートーナメント 決勝>
○サイモン・マーカス(カナダ)
(3R判定 2−1※28−30、30−27、29−28)
●ジェイソン・ウィルニス(オランダ)

初戦でのダメージがウィルニスには残っている模様。ガチガチの攻防となり判定で審判の評価が真っ二つに割れた結果、アルテム・レヴィンへの挑戦権はマーカスがゲット。

<スーパーファイト ライトヘビー級>
○サウロ・カヴァラリ(ブラジル)
(3R判定 3−0※三者29−28) 
●アルテム・ヴァキトフ(ロシア)

引退したトム・ハリンク氏がカヴァラリのセコンドに。互いに慎重。カヴァラリの手数が多いが今一歩中に入れずヴァキトフも自分の流れが作れない。嬉しい判定はカヴァラリ。

<スーパーファイト ライトヘビー級>
○ムラド・ブジディ(チュニジア)
(3R判定 3−0※3者30−27)
●ダスティン・ジャコビー(米国)

オーソドックスにガードが高い両者。圧力をかけ前に出るブジディとリングを周るジャコビー。最後まで追い続ける形となったブジディが文句なしの勝利。

<スーパーファイト ヘビー級>
○チルイス・パリー(イギリス)
(1R0分25秒 KO※パンチ連打)
●ヨンス・パーク(韓国)

ミドルを2発繰り出したヨンス。直後にパリーのフックを5連打浴びて昏倒。この試合はグローリー最速KO記録となった。

<スーパーファイト ミドル級>
○サミール・ブキドス(モロッコ)
(1R2分00秒 TKO※レフェリーストップ)
●ミハイル・チャリク(ロシア)

85kgコンテンダートーナメントのリザーブファイト。牽制の左ストレートから右フックでブキドスがダウンを二度奪ってレフェリーストップのTKO勝利。

<スーパーファイト ライト級>
○アナトリー・モイセフ(ロシア)
(1R0分38秒 KO※左ハイ)
●マックス・ボーマート(ドイツ)

左ローで探りを入れ間合いを見切っての左ハイ一閃。最速記録ベスト2となった。

<スーパーファイト ウェルター級>
○チャド・スグデン(イギリス)
(3R判定 3−0)
●アタカン・アルスラン(トルコ)

「相手にミスをさせ自滅させる」これがスグデンの方針。その通りの結果となった。
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