田中将大、“本格派の片鱗”見せられず まだ1試合…疑問の答えはこれから
6奪三振もエースらしい迫力欠く
ケガ明けのシーズン、新しい投球スタイルを模索しているような田中。次回登板では、どんな投球を見せるだろうか 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】
昨季の田中は最高の調子ではないときでも、長期休養明け2戦目のレッドソックス戦を除き、一気に試合を壊してしまうようなビッグイニングを作ることはほとんどなかった。その安定感の根底にあったのが、困ったときに頼りになる真っすぐとスプリッターのコンビネーションだった。
序盤から快速球で押しまくるタイプではないが、状況に応じて90マイル台中盤(約152キロ前後)まで速度を上げられる。犠飛や内野ゴロでの失点も許したくない状況では、見え見えのスプリッターで空振りを奪える。基本はクレバーで投球術に優れたタイプでも、必要ならば“本格派”になり得る投手であるからこそ、昨夏に離脱するまでの支配的な投球は可能になった。
ただ、スプリッターを中心に6三振は奪ったものの、ツーシーム、スライダーを多投し続けたこの日の投球に本格派の匂いは薄かった。
速球の使い方がすべてではないが、球威があった方がコントロールミスも打ち損じてもらえ、得意のスプリッターも生きてくるのは当然。CBSスポーツのジョン・ヘイモン記者が評した“ジャンクボーラー(軟投派)”は大げさにしても、開幕戦の田中にエースらしい迫力が欠けていたのは確かである。
約7割が変化球、その理由は?
「オープン戦ではフォーシームよりもツーシームを使っている。それで昨季よりも球速が落ちている」
開幕前々日の会見時に田中はそんな言葉を残し、普段から口うるさいニューヨークメディアは色めき立った。オープン戦中から球速低下が指摘され、右肘に負担をかけまいとしているのではないかと勘ぐられた。案の定、開幕戦でも全82球のうち56球が変化球。その理由を突っ込まれ、「(真っすぐは)打たれていたから」と答えた姿も印象的だった。
「(真っすぐが打たれたのは)自分が不利なカウントに持っていったからじゃないですか。基本、バッターはストレートを待つ。そのストレートに合わせて振りやすいカウントに自分がしてしまった」
その言葉通り、この日は一時的に制球が乱れたのがすべてだったのかもしれない。次の先発時には切れ味が戻り、フォーシームの速球が増えることも考えられる。球が走らない日は誰にでもあり、1試合で結論を出すのは浅はか過ぎる。
今後どんなスタイルでやっていくのか
今後、田中はどんなスタイルの投手としてメジャーでやっていくのか。昨季と大きく変わるのか。去年の序盤に誇示した支配力と安定感はよみがえるのか。それらの疑問の答えは、今季中、そう遠からず見えてくるのだろう。
次の舞台は、予定通りなら4月12日のレッドソックス戦――。ESPNで全米中継されるゲームでも“本格派の片鱗”を示さなかった場合には、周囲は再び騒ぎ立てるはず。ただ……逆に言えば、キレのある真っすぐを投げ込んで健在ぶりを誇示し、厄介な地元メディアを黙らせるのに、注目のライバル対決は絶好の舞台なのも事実ではある。