エピファは賭け失敗 ハープは距離再考を 奥野庸介のドバイワールドカップデー回顧

JRA-VAN

ドバイワールドカップ

G1ドバイワールドカップはW.ビュイック騎乗のプリンスビショップが優勝 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 舞台をダートとした最初のG1ドバイワールドカップは、W.ビュイック騎乗の地元8歳馬プリンスビショップが米国年度代表馬カリフォルニアクロームに2馬身3/4差をつけて優勝。このレース4度目の挑戦で念願のタイトルをマクトゥームファミリーに贈った。

 これが28戦目となるプリンスビショップは、前哨戦と同様に最後方からの競馬も、W.ビュイック騎手が前の馬が蹴り上げる砂を避けるようにして巧みに向正面で馬群の大外に取り付き、最終コーナーからのロングスパートを決めた。

 逃げたホッコータルマエはゴールまで320メートルの地点で勝ち馬に交わされた後も必至の抵抗を試みたが、最後はスタミナを切らせて5着で入線。これを外からぴったりとマークしたカリフォルニアクロームも、プリンスビショップの脚色の前になす術なく白旗を掲げた。3着には4番手で追走した米国のリー。

 この日2勝を挙げて好調のC.スミヨン騎手で、ジャパンカップの再現を目論んだエピファネイアは、向正面でキックバックをまともに浴びて戦意喪失。3コーナーの手前から徐々に遅れはじめ、勝ち馬から7秒以上離されたしんがり負け。初ダート挑戦の「賭け」は失敗に終わった。

逃げ・先行有利を覆したプリンスビショップ

しんがり負けとなってしまったC.スミヨン騎乗のエピファネイア 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 メイダン競馬場のダートコースは前哨戦まで圧倒的に逃げ・先行有利だったが、プリンスビショップはこれを覆しての完勝。当日の散水で馬場が締まったことやホッコータルマエがつくった緩みのない流れも味方したのだろうが、これ以外にもビュイック騎手の好騎乗や、この馬が内包していたダート適性(祖父のドバイミレニアムはナドアルシバ時代のドバイWCを圧勝、父のドバウィはUAEダービーの覇者ムブタヒージも送る)、加えて8歳という遅い本格化を挙げておく必要がある。

 フランスで3歳デビューのプリンスビショップは、その年、2つの重賞を含む4勝を挙げ、G2コンセイユ・ド・パリ賞では、のちの古馬王者シリュスデゼーグルを退けたように、地力はあったのだろう。その後にS.B.スルール厩舎にトレードされてからは、地元となったメイダン開催に注力したが、過去3度のドバイWC挑戦は10着(12年)、7着(13年)、9着(14年)と惨敗。昨年は前哨戦のG1マクトゥームCh・R3を勝ったようにAWのタペタトラックがだめだった訳ではないが、なぜか本番になると萎縮してしまう傾向があったようだ。

 昨年の覇者アフリカンストーリーは6着に敗退。前哨戦でプリンスビショップをおさえたが、本番では一挙に逆転されてしまった。エピファネイアの敗戦は仕方なしだが、ホッコータルマエの幸英明騎手は内を併走する撮影カメラ車の存在やスピーカーの音に馬が気を遣ったとコメントしている。負け惜しみではなく、事前の準備でやっておくべきことが、またひとつつかめたという点では収穫だったのではないか。

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