ソチ金・鈴木猛史の飽くなき挑戦 「全種目で金」を目指すが故の危機感

瀬長あすか

世界王者としての“凱旋V”は叶わず

2014−15シーズン、世界王者に輝いたソチパラリンピック回転・金メダルの鈴木猛史 【堀切功】

 昨年のソチパラリンピック・アルペンスキー男子座位回転種目で金メダルを獲得した鈴木猛史(駿河台大職員)は、今シーズンも輝かしい成績を残している。2014−15シーズンのワールドカップ(W杯)総合優勝と技術系の種目別優勝、そして9日までカナダ・パノラマで開催されていた世界選手権では回転(スラローム)種目で世界の頂に上がった。

 20日から4日間にわたって、長野県の白馬八方尾根スキー場で行われた2015ジャパンパラ・アルペンスキー競技大会は、その鈴木にとっての凱旋レースだった。初日の大回転で日本チームのエース・森井大輝(トヨタ自動車)を抑えて優勝し、満を持して2日目の回転に臨んだ。

「シーズンの締めくくりになるスラロームで世界一の滑りをお見せしたい。そう思ってスタートしたのですが、意気込みすぎてミスをしてしまいました」

 攻めの気持ちが強すぎたあまり、1本目でコースアウト。2本目に進むこともできず、国内最高峰の舞台での“凱旋V”は叶わなかった。

ジャパンパラ・アルペンスキー競技大会 ハイライト


(映像提供:日本障がい者スポーツ協会、制作:エックスワン)

痛感した技術不足

 春の白馬は、気温の上昇により緩んだ雪面にスキー板が沈み込み、理想の滑り(弧を描くターン)が難しい。

「今シーズンはコース状況に応じた滑りで安定した成績を残せたが、今大会では雪質に合わせられない、技術不足を痛感しました。転戦してきた欧州は雪が少なく、硬いバーンもあれば、ザラメ雪の場合もある。技術の幅を広げるために、来シーズンはもっといろいろなバーンで練習をして感覚を研ぎすまさなきゃですね」

 目指しているのは、「健常者のような滑り」。チェアスキーヤーの中では鈴木にしかできない「逆手」を駆使する“回転のスペシャリスト”は、3年後の平昌パラリンピックを見据えて飽くなき挑戦を続ける。

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著者プロフィール

1980年生まれ。制作会社で雑誌・広報紙などを手がけた後、フリーランスの編集者兼ライターに。2003年に見たブラインドサッカーに魅了され、04年アテネパラリンピックから本格的に障害者スポーツの取材を開始。10年のウィルチェアーラグビー世界選手権(カナダ)などを取材

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