ACLで日本が勝てなくなった理由とは? 2次元でサッカーを見る日本人
ACLの初戦は3敗1分という結果に終わった。なぜこれほど分の悪い大会になってしまったのか 【写真:伊藤真吾/アフロスポーツ】
週替わりに一つのテーマを複数の筆者が語り合うサイト『J論』では、日本のフットボールカルチャーに潜む、ある種の問題点を指摘する。
起こっている現象はシンプルだ
そんなことを思うことがある。相手がバーチャルで、リアリティーもなく、すべてのストーリーを自分本位で展開させたがる。それがこの国のフットボールカルチャーだ。
JリーグはなぜACLで勝てないのか――。こんなテーマ設定の先に、明るい未来は待っていない。反省も含めた“現実の後追い”をすべて否定するわけではないが、自分たちが後ろを見ているうちに、ライバルたちは先に進んでいくだろう。そしてこの議論の難点は“相手”がいないことだ。
サッカーは常に相手がいる。しかし日本のサッカー界は“ダメなところ探し”には熱心な人こそ多くても、“相手の強いところ探し”を楽しく語る人が少ない。確かに外国の情報へアクセスする場合には言葉と距離の壁があり、日本のサッカーファンはアジアに対する興味があまりない。だからメディアにとって、それは費用対効果の低い作業なのだろう。しかしその帰結として日本のサッカーファンは、アジアのライバルに対して「お金がある」「フィジカルが強い」というレベルの漠としたイメージしか持っていない。サッカーのクオリティーについては、過小評価をしている例が多い。
昨今のACLで起こっているのは「中国、韓国、オーストラリアのクラブに対してJリーグ勢の分が悪い」というシンプルな現象だ。07年、08年と日本勢が連覇している大会であるがゆえに、“日本がダメになった感”はある。しかし09年に大会の方式が変わり(実績があり、リーグが整っている国から多くのクラブが出る方式へ変更)、ACLはおなじみのメンバーで争われる“4カ国対抗戦”になった。そういった中で、相手も“対日本”の経験値を積んでいった。09年以降の優勝国を見ると韓国(浦項スティーラース)、韓国(城南FC)、カタール(アル・サッド)、韓国(蔚山現代FC)、中国(広州恒大)、オーストラリア(ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ=WSW)と続いている。
つまり、中韓豪の3カ国が強くなったのだ。
求められる知のバトル
鹿島はホームで前回王者のウェスタン・シドニー・ワンダラーズに敗れた 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
中韓豪との接点が増えれば増えるほど、分が悪くなる。これはJリーグ勢の学習能力が足りないということだ。相手を分析し、手を打つという“頭脳戦”で敗れている証拠だ。
私が取材をしたのは柏と全北のアウェー戦で、無失点にこそ封じられたが、昨季の韓国王者・全北のサッカーは強烈だった。韓国代表で100試合近くに出場したFWイ・ドングが筋肉系の負傷で欠場していたが、自分が瞠目(どうもく)したのは右サイドMFハン・ギョウォン。スペースを空けると一気に加速してぶっちぎるし、タイトに寄せるとウナギのような身のこなしですり抜けてしまう。“剛と柔”を兼ね備えた高速テクニシャンで、武藤嘉紀(FC東京)と比べても同等以上のサイドアタッカーだと思った。
センターFWや両サイドめがけてロングボールを蹴り込み、球際で激しく競って、なるべく自分たちに有利な混戦状態を創り出す。球際の強さと、旺盛なプレスでマイボールを確保し、巧みなドリブルやスピードを生かして縦、縦に仕掛けてくる。全北のスタイルは日本で言ったら流通経済大柏高(千葉)のサッカーに近い。英国のブックメーカー「ウィリアムヒル」の付けたオッズによると広州恒大、G大阪に次ぐ優勝候補の3番手らしいが、間違いなくグッドチームだった。柏は5バック気味の布陣を採用して相手の強みを消し、アウェーで勝ち点1を得ることに成功した。柏に限っては、知のバトルで一定の成功を収めたとも言える。