ACLで日本が勝てなくなった理由とは? 2次元でサッカーを見る日本人

大島和人

07年の浦和は一つの理想形

07年にACLを制した浦和の選手たち。個の局面で相手を上回る選手がそろっていた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 加えて不確定要素の多いアジアの戦いでは、精密に組み上げていくサッカーがなかなか機能しない。守備ではしっかり知的に相手を壊すこと、攻撃はシンプルだけど“キャラの立った”モノを見せることが相手を上回る条件だと思う。

 07年の浦和については、序盤戦からセパハン(イラン)との決勝戦までのホーム戦をほぼすべて見た。あれはACLにおける一つの理想形だ。田中マルクス闘莉王、坪井慶介、阿部勇樹が最後尾を固め、中盤には長谷部誠と鈴木啓太がいる。前線にはワシントンとポンテ! それに永井雄一郎、田中達也と個でボールを運べる選手もいた。強さ、ドリブルと個の局面で相手を上回る絶対値を持った選手がそろっていた。お互いの強みをつぶし合う“塩試合”になれば、あとは個で勝ててしまうという安心感があった。

 強さはもちろんだが、ドリブルもアジアの舞台では武器になる。先述のハン・ギョウォン(全北)もそうだし、07年のACLでは永井雄一郎が大会MVPを獲得する活躍を見せた。

必要な人材がいないわけではない

 自分が意外に“アジアでやれるのではないか”と思ったのが昨季の川崎フロンターレだ。韓国の強豪・FCソウルを相手に中村憲剛、大久保嘉人、レナト、小林悠の攻撃陣は違いを見せていた。しかしホーム戦で守備陣が“安い失点”をしてしまったことで、ベスト8進出を逃したわけだが……。いずれにせよ“キャラの立った”チームである。

 今の日本に人材がいないわけではない。WSWはACLのディフェンディングチャンピオンだが、高萩洋次郎と田中裕介を獲得し、高萩は鹿島を下す立役者になった。ヨーロッパで活躍する日本人選手を見ても分かるとおり、国際舞台で違いを生み出せるレベルのアタッカーが、この国にも十分にそろっている。

 振り返ればスーパーチームだった07年の浦和も、準決勝の城南戦はPK戦にもつれ込む紙一重の接戦だった。最終的に勝負を分けるのはディテールの、ほんの少しの違いだ。相手をリスペクトしてその強みを受け止める知的な守備と、攻撃における個の活用、そしてちょっとの運さえあれば、Jリーグ勢もACLを勝ち取れるだろう。

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著者プロフィール

1976年生まれ。生まれが横浜で育ちは埼玉。現在は東京都(神奈川県に非ず)町田市に在住している。サッカーは親にやらされたが好きになれず、Jリーグ開幕後に観戦者として魅力へ目覚めた。学生時代は渋谷の某放送局で海外スポーツのリサーチを担当し、留年するほどのめり込む。卒業後は堅気転向を志して某外資系損保などに勤務するも足を洗いきれず、2010年より球技ライターとしてメジャー活動を開始。

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