障がい者スポーツを身近にする日本開催 クロカンW杯開催の旭川に見たその意義

瀬長あすか

アジア初のW杯開催

アジアで初となったクロスカントリーW杯には地元・旭川の小学生が各国の国旗を振って大会を盛り上げた 【吉村もと/MA SPORTS】

 2月14日から6日間にわたって、富沢クロスカントリースキーコースで開催されたIPCクロスカントリーワールドカップ旭川大会。IPC(国際パラリンピック委員会)が主催するワールドカップは、年に3〜4カ所を転戦することになるが、今回アジアでは初の開催となった。19日に閉幕した大会で、日本はベテラン新田佳浩(日立ソリューションズ)の銀メダル1個、19歳・阿部友里香(日立ソリューションズJSC)の銀メダル3個を含む計9個のメダルを獲得。獲得メダル数21個のロシアや金メダル9個の米国と比較すると、世界で戦える選手不足が浮き彫りになったものの、1998年の長野パラリンピック以来となる日本での国際大会とあって選手、関係者、そして地域の人たちにとって意義のある大会になった。

障がい者スキー・クロスカントリーの世界


(映像提供:MA SPORTS)

手応えと課題を得た地元開催

レース後、カナダチームのコーチと意見交換を交わしていた新田(右)。バンクーバーパラリンピックメダリストにとって初の日本開催は悔しい大会になったようだ 【吉村もと/MA SPORTS】

 バンクーバーパラリンピック2冠の新田は、15日の男子立位スプリント・クラシカルで2位、16日の同ロング・クラシカルで3位になり、表彰台に上がった。だが、左のかかとのケガで1月の世界選手権(米国・ケーブル)を回避し、今季のメインを今大会と位置づけていたため、笑顔は少ない。
 旭川は毎回、パラリンピック前の最終調整を行う特別な地でもある。「負けられない場所だった」と唇をかんだが、最後は「冬のパラスポーツは旭川から発信したい。ここから、もう一度パラリンピックのメダルを目指す」と誓った。

 一方の女子立位は、今季好調の阿部が、得意のスプリントなどで連日の表彰台。ソチパラリンピック後にトリノ&バンクーバーパラリンピックのメダリスト、太田渉子氏が引退し、女子のエースと期待される存在だ。
「ソチでパラリンピックの大きな舞台を経験したので、緊張はもうない。十分に練習ができていないけれど、1年前のビデオと見比べると技術面で少し成長できたかな」とは本人談。出場選手が4人と少ないカテゴリーながら、自身初となるワールドカップのメダルを手にし、手応えを得たようだ。

 それでも、3年後に迫る18年平昌パラリンピックへの道は険しい。日本代表チームの荒井秀樹監督は「日本で開催したから、14歳の星澤克、13歳の川除大輝(ともにオープン参加)が初めて国際大会を経験できた。それはうれしい話だけれど、シット(座位)とブラインド(視覚障害)のカテゴリーについては選手がおらず、再構築しなければならない」と長年の課題である選手発掘について言及した。

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著者プロフィール

1980年生まれ。制作会社で雑誌・広報紙などを手がけた後、フリーランスの編集者兼ライターに。2003年に見たブラインドサッカーに魅了され、04年アテネパラリンピックから本格的に障害者スポーツの取材を開始。10年のウィルチェアーラグビー世界選手権(カナダ)などを取材

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