障がい者スポーツを身近にする日本開催 クロカンW杯開催の旭川に見たその意義
W杯旭川大会、日本人選手ハイライト
映像に登場する選手は、登場順で猪飼嘉司、阿部、高村和人(ガイド荒井)、新田、出来島桃子、阿部(映像提供:MA SPORTS)
低い大会認知度、求められる街ぐるみでの取り組み
大会には地元の高校生がボランティアとして運営を支えていた 【吉村もと/MA SPORTS】
学校訪問では、全盲のアントニー・シャロコン(フランス)がバイアスロン競技の射撃を20発、的に当てて見せたそうで、「すごくかっこよかったんだよ」と、観戦に来た5年生男児が筆者に興奮気味に語ってくれた。大会に出場した9カ国の国旗を手に、力いっぱい声援を送って大会を盛り上げた子どもたち。ソチパラリンピック金メダリストで視覚障害のブライアン・マキーバー(カナダ)は、「子どもや家族連れの声援が選手の力になったと思う。コースも雪質も良いし、旭川は最高だね」と話していた。
とはいえ、観客数は平日200人、休日でも550人と決して多くはなかった。「スプリントなどは街中で行い、自然に人目に触れる工夫があるいい」とはソチパラリンピック日本代表の佐藤圭一(エイベックスホールディングス)。無料のホットドリンクコーナー、障害によるレースの特性を分かりやすく解説する会場アナウンスなどの工夫はあったが、街中での大会認知度は低く、市を挙げて集客する必要があっただろう。
継続的な国際大会の開催が東京2020成功のカギ
「日本も国際レースを当たり前のように誘致していくべき。僕ら選手はいつも海外に出て行くばかりなので、日本で迎え撃つ経験を増やしていきたいし、なにより海外からトップアスリートに来てもらうことで観客のスポーツを見る目が養われるのではないか」と話し、それが東京パラリンピックの準備に重要だという。
例えば、34回の歴史を刻む大分国際車いすマラソンが参考になる。大分市では、子どもたちが当たり前のように車いすマラソンを観て育ち、市民にとって車いすレーサーが走る姿は当たり前の光景になっていると聞く。
子どもたちだけではない。旭川大会を約200人のボランティアが支えたが、その多くが障がい者スポーツを初めて観た人たちだった。今後、大会が継続的に開催されれば、市民にとって障がい者スポーツが身近なものになるのではないだろうか。
平昌パラリンピックの事前合宿誘致も行う旭川市の富沢クロスカントリースキーコースは、年末年始の時期になると五輪、パラリンピック、ジュニア・ユース世代の日本代表、そしてお年寄りから子どもまでが入り交じってクロスカントリーをしている光景があるという。
それぞれの地方自治体が国際大会を誘致し、それを継続させることが、東京パラリンピック成功のカギを握るのかもしれない。