南野デビューも「物足りなさを感じる」 チームが求めるのは勇気と切り替えの速さ
カンプルの後継者として期待されるもの
チームに順応していくために、南野には勇気と切り替えの速さが求められる 【Bongarts/Getty Images】
例えばこの試合の前半では中央突破に固執しすぎたために相手の体を張った守備を崩すことができないでいた。ビルドアップからの縦パスはリズムを変え、攻撃のスイッチを入れることができる有効な武器だが、常にそればかりを狙っていては相手に奪いどころを絞られてしまう。南野もそれに引きずられ、狭いスペースで相手のマークを常に受けながらのプレーを余儀なくされていた。もちろん来たばかりの南野にどうにかしろというのは酷な話かもしれない。しかしカンプルの後継者として期待がかけられているだけに、こうした状況で攻撃を落ち着かせ、リズムに変化をもたせる動きが求められている。
そんな南野のポジショニングに後半、改善の兆しが見られるようになる。相手選手の間のスペースにするすると入り込み、相手選手が「自分がマークに付くべきかどうか」を迷うような位置取りをしだしたのだ。54分にDFからの縦パスをFWホナタン・ソリアーノ・カサスがダイレクトで南野に落とし、そこから左サイドへ展開というプレーがあったが、この時の距離感、位置関係は南野のイメージとチームのイメージがうまく合わさっていた。
チームも後半になるとサイドをワイドに使い、相手守備を揺さぶるようになる。前半と比べると面白いようにパスが回るようになり、ウィーナー・ノイシュタットを追い込んでいく。リーグ得点王をひた走るソリアーノが50分にペナルティーエリア左外から見事な直接FKを決めて先制すると、67分にDFラインの裏に抜けだしたマッシモ・ブルーノのアシストを受けて、またしてもソリアーノがゴール。最終的には順当勝ちを収めた。
見据えているステージはここではない
素早い切り替えの連続が求められるトップレベルのサッカーでは攻守両面におけるインテンシティー(プレー強度)が非常に重要になる。ダッシュでボールを奪いに行ったあとで、すぐにまたダッシュで裏のスペースに飛び出し、ボールを失うとまたダッシュで戻る。これをどれだけの頻度で繰り返しできるか、そしてそれだけの負荷の中でも冷静な判断力で確かな技術を発揮できるか。今日の試合の頻度では足らないし、そのことは南野自身も分かっているだろう。
攻撃的なサッカーに惹かれてザルツブルクを選んだ南野。かつてラングニックは「攻撃で大事なのはスピードとプレーアイデア。そして勇気がなければならない。若い選手にとってリスクを冒してでも積極的にプレスを仕掛け、ボールを奪い取り、素早く仕掛けていくサッカーは冒険のように魅力的なんだ」と諭すように語っていた。南野がその魅力に引き込まれ、チームをけん引する存在にまで成長したら――。欧州における楽しみがまた一つ増えた。