“低調”女子マラソン、復調のカギは?
不調を克服した重友梨佐の意識の変化

派遣設定記録に近づく選手は現れず

大阪国際女子マラソンで日本人トップとなった重友梨佐。記録は低調なものだったが、復調の兆しを見せた
大阪国際女子マラソンで日本人トップとなった重友梨佐。記録は低調なものだったが、復調の兆しを見せた【写真は共同】

 日本女子マラソン界の明暗が表れたレースとなった。


 大阪国際女子マラソンが25日、大阪市のヤンマースタジアム長居を発着点とする42.195キロのコースで行われ、タチアナ・ガメラ(ウクライナ)が後半を独走して3連覇を飾った。気象条件に恵まれたこともあり、ガメラの記録は2時間22分09秒の自己最高タイム。ロンドン五輪5位入賞者の実力を見せつけた。


 それに対し、日本勢の記録は低調だった。3位に入った重友梨佐(天満屋)は2時間26分39秒で、3年前の同大会で出した自己記録(2時間23分23秒)に遠くおよばなかった。昨年11月の横浜国際女子マラソン優勝の田中智美(第一生命)も、タイムは2時間26分57秒。日本陸上競技連盟が設けた世界選手権(8月、中国・北京)の派遣設定記録、2時間22分30秒に近づく選手は現れていない()。


 明るい話題は“将来のエース候補”と言われた重友が、ロンドン五輪以降の不調を克服したこと。日本人2位(全体4位)の渡邊裕子(エディオン)も、不調から抜け出す兆しを見せた。今回から新設された若手選手の育成を目的とした「ネクスト ヒロイン」枠で出場した城戸智恵子(キヤノンAC九州)も、初マラソンで日本人3位(全体5位)と健闘した。


)派遣設定記録を破った選手が選考レース(横浜国際女子、大阪国際女子、名古屋ウィメンズ)で日本人3位以内に入れば世界選手権代表に決定する。派遣設定記録突破者がいなければ、選考レース日本人3位以内でナショナル・チームのメンバーから選考される

後半の粘りが見られた重友

 重友の復調は、積極的にガメラを追走した前半よりも、粘った後半に見られた。


 3年前の同大会に優勝してロンドン五輪代表を決めたが、本番は79位と大敗。その後の3レースは2時間30分すら切れない。昨年の大阪前は良い練習が積めた手応えがあり、2時間22分台を狙えるペースに持ち込んだが、17キロと早い段階で遅れた。2時間58分45秒(64位)の自己ワースト記録に終わっている。


 今回はガメラがスタート直後から飛ばし、それにつく形で昨年と同じペースになった。ガメラの前で引っ張る積極性も見せたが、2時間22分のペースについていく力はない。23キロで遅れたときは、昨年の失速もチーム関係者は考えたという。


 だが、今年の重友は崩れなかった。30キロ過ぎでエレナ・プロコプツカ(ラトビア)にも抜かれたが、35キロまでは5キロ毎で17分台をキープした。2時間26分台ではあったが、重友は控えめに両手を挙げてフィニッシュ。サポーターたちに囲まれて頭を下げたとき、涙が頬を伝った。

「後半も落ち着いて走れたことが、昨年との大きな違いです。昨年は気持ちの焦りがレースに出てしまいましたから。五輪後にうまくいかなくて苦しい時期が長く続き、マラソンが怖い気持ちもありました。でも、もう1回しっかり走ろうと取り組みをいろいろと変えました。今回は世界選手権代表のことまでは考えられませんでしたが、破れなかった殻をやっと破ることができて、自分に手応えを感じられたレースです」


 重友に、3年前とは少し違った笑顔が見られた。

前向きな気持ちを思い出す

 重友が変えた取り組みとは何だったのか。


 きっかけは昨年8月に、チームとは別に行った単独合宿だった。泉有花マネジャーと2人だけで、北海道でトレーニングに取り組んだ。チーム行動を原則とする天満屋としては、初めての試みでもあった。


 泉マネジャーは重友と同じように、天満屋で主将を務めたこともある。五輪代表を4大会連続で輩出している名門チーム。その主将として何もできていない、と自責の念にかられていた重友の、気持ちを楽にするアドバイスができた。


 トレーニング面でも、2時間23分23秒を出したときの練習にこだわり過ぎていた。「やらなきゃ、やらなきゃ」と必死になる重友は、走ることの楽しさも忘れかけていた。

 そこで泉マネジャーから、別のトレーニングを提案された。

「股関節や太もも周りが、使えていない走りになっていることを指摘してもらいました。サーキットトレーニング、バイク、トレッドミルなどを使い、普段は動かせていなかったところを、速い動きで刺激を与えるようにしました」


 新たなアプローチ法は、重友の精神面にもプラスに働いた。1年前は「何がダメだったのか分からない。どうして良いのか分からない」状態だったが、今大会前にはまったく違う心境になっていた。

「成績が良くても悪くても、やり方を変えたことがどういう結果になるか、そこを見ることができるレースになります。走ること自体に意味があるので、怖さよりも楽しみの方が大きいです」


 新しいことへのチャレンジが前向きな気持ちで走ることになり、それが後半に見せた粘りにもつながった。

寺田辰朗

陸上競技専門のフリーライター。地道な資料整理など、泥臭い仕事がバックボーンだという。座右の銘は「この一球は絶対無二の一球なり」。敬愛する人物は三谷幸喜。

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