リスクを背負って獲得したソチでの勲章 スキージャンプ・清水礼留飛が得た経験

高野祐太

ソチ五輪スキージャンプ男子ラージヒル団体で銅メダルを獲得した日本代表メンバーとなった清水礼留飛 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 スキージャンプ男子の清水礼留飛(雪印メグミルク)は昨年2月、ソチ五輪という大舞台に立ち、あの“レジェンド”葛西紀明(土屋ホーム)らとともに“日の丸飛行隊”を形成し、ラージヒル団体の銅メダルという大きな勲章を手に入れた。

 弱冠20歳にして対峙することのできた経験、あの場に至るまでにどんなことを考え、行ったのか。そして、ソチ以前と以後で何が変わり、何が変わらなかったのか。3年後の平昌五輪まではどんな道程を描こうとしているのか。

 日本ジャンプ界の若きホープの本音に迫った。

競技人生にとってプラスの経験

気持ちの切り替えができてからは、良いジャンプを連発した 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――五輪という夢の舞台に初めて臨む時の気持ちは、どんなものでしたか? 多くのオリンピアンが、「五輪は、ほかのどんな大会とも雰囲気が違う」と言いますが、そういうものを感じましたか?

 五輪は小さい頃からのあこがれでした。ソチの舞台に立った時は、「これは五輪なんだ」と意識していたことが一番大きいと思います。観客の数も多いですし、メディアの注目度も違います。でも緊張したのは、ノーマルヒルの予選の1本だけで、それ以降はすぐに緊張が解けた感じです。

 もう割り切ったというか。これが五輪なんだなと思った後は、それも踏まえて普通通りやるしかないなと思えました。

――自然体になれた感じですか?

 そうですね。ワールドカップ(W杯)に何十試合も出ている中で、そんなに気持ちを引きずっていたら結果も出ないし、海外にいる意味もないというか。せっかく海外に行っているのに同じことを何回もやっていても、時間がもったいない。そういう切り替えという面では、普段の経験が生きたのかなと思います。

――清水選手にとってのソチ五輪は、出場自体が当落線上から引き寄せたものでした。ここ一番での勝負強さと集中力が発揮できましたか?

 特別、集中力があったということはありません。シーズン序盤はW杯の成績があまり良くなかったので、当初は出られるとは考えていませんでした。でも、あきらめてはいなくて、必死で最後の雪印メグミルク杯を戦った結果、優勝することができました。その時は、最低限の仕事はできたと思いました。

――ソチ五輪に出場できなかった自分を思った時に、実際に出たことの意味をどう感じていますか?

 もちろん、僕の競技人生にとって、ものすごくプラスになると思います。やっぱり、五輪で金メダルを取るという目標があって、初出場で取るのは難しいことだと思いますし、経験に勝るものはありません。その舞台を経験しておくことによって、次は、よりスムーズに、ストレスなく臨めると思うので、すごくプラスになったと思います。

飛べば飛ぶほど調子が上がる

団体のメダル獲得にも貢献できた 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

――ノーマルヒル個人では18位でしたが、ラージヒル個人は135メートル近いジャンプもあって10位。ラージヒル団体でも、流れを左右するトップバッターを務めて130メートルオーバーを2本そろえました。この結果についての自己評価は?

 ソチに入ってから、飛べば飛ぶほどどんどん調子が上がっていたので、トレーニングの段階から見れば、ありえない順位ではないのかなと思いました。

――直前のW杯も20位台後半などの成績でした。調子が急上昇したと?

 はい。現地入りしてから、ノーマルヒルのトレーニングが始まって、いきなり飛んでいくようになり、自分でも驚いたくらいです。ソチのジャンプ台では前の年にW杯の最高順位の9位を取ることができていたので自信もあったし、相性の良い台だと思っていました。自信を持って臨めたのは良かったなと思います。

――最初の予選での緊張と失敗から修正できたのも、そのあたりの自信があったからでしょうか?

 予選のジャンプは、かなり大きなミスでした。気持ちを前に前に出してしまって、テイクオフ(踏み切り)の時に前方へ飛び出し過ぎてしまうことが多く、それが露骨に出てしまいました。次からはもっと良いジャンプをする自信があったので、今までやってきたことを準備の段階でうまく整理できたので、あとはやるだけでした。

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著者プロフィール

1969年北海道生まれ。業界紙記者などを経てフリーライター。ノンジャンルのテーマに当たっている。スポーツでは陸上競技やテニスなど一般スポーツを中心に取材し、五輪は北京大会から。著書に、『カーリングガールズ―2010年バンクーバーへ、新生チーム青森の第一歩―』(エムジーコーポレーション)、『〈10秒00の壁〉を破れ!陸上男子100m 若きアスリートたちの挑戦(世の中への扉)』(講談社)。

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