現役最高6打者の打撃思考 成功者に学ぶ進化へのアプローチ

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内川を歴代最高の右打者に引き上げた発想の転換

7年連続となる打率3割をマーク、右打者として歴史上でも代表する打者となったソフトバンク・内川 【写真=BBM】

 14年シーズン、日本一に輝いた福岡ソフトバンク。その打線はリーグトップのチーム打率2割8分をマークし、打撃十傑に並んだ5人の選手はいずれも打率3割を超えた。チームトップは柳田悠岐で打率3割1分7厘。144試合すべてにスタメン出場して初めてレギュラーとしてシーズンを全うした。その柳田が言う。

「内川(聖一)さん、長谷川(勇也)さんがすごいのは、全球、同じスイングができることなんです。その域に達しないと安定した成績は残せないんだって分かります」

 これからスターダムに上り詰めようとする26歳の若鷹にとって、2人のヒットメーカーは最高の教材だ。

 内川は昨季、7年連続の打率3割を達成。三冠王3度の落合博満(現、中日GM)と肩を並べ、歴代の右打者でも最高の域に達した。安打を打つことに関しての貪欲さは語られた言葉からもうかがい知ることができる。
「バットはグリップの上からバットの先端まで、使えるところは全部使います。フィールドも90度全部がヒットゾーンだと思っています」

 開眼したのは横浜(現・横浜DeNA)時代の08年。それまで、自分の長所だと思い込んでいた投手寄りのポイントでとらえて安打にできる技術を、その年に打撃コーチに就任した杉村繁・現東京ヤクルト1軍打撃コーチから、その技術にこそ穴があると伝えられた。

「ほかのチームはお前に泳がせて打たせようとしている、って言われました」

 それまで期待されながらもレギュラーに定着できていなかったこともあり、打つポイントを体に近づけるという新しい方法論も自然と受け入れることができた。その年、初めて規定打席に到達し、打率3割7分8厘の右打者最高打率をマーク。発想の転換により成功した好例だ。

「やるべきことを怠らない」長谷川勇也

試合終了後のスイングチェックを欠かさないソフトバンク・長谷川 【写真=BBM】

 13年シーズンに200安打にあと2本と迫った長谷川は、試合終了後、一人、ミラールームにこもり、スイングチェックを欠かさない。試合の映像を確認し、感覚と実際のズレの原因を見つけ出した上で、「明日、これでいける」と思うまで素振りを繰り返す。その姿勢は掲げた理想へ脇目もふらない求道者のようだが、そのフォームは積極的に新しい動きを取り入れ、日々変化している。

「同じことをしていたら、感覚が鈍くなってくるんです」

 長いシーズン、自分の体調も一定でなければ相手も変わるし、環境も変わる。その中で一つの形に固執することは得策ではない。変化によって起こるズレをいち早く察知し、それに合ったベストの形に自分を作り変える作業を日々、行っているのだ。

 打撃とは刻々と動く時計のようなものらしい。短針と長針、秒針が重なり合うのは、ほんの一瞬。すべてがかみ合ったと思った次の瞬間にはズレが生じている。

「バチッとはまる瞬間をより多く生むために、やるべきことを怠らないこと」

 それが職人と呼ばれる男の神髄だ。

柳田、フルスイングは「ヒットを打つため」

さらなる飛躍が期待されるソフトバンク・柳田。フルスイングはあくまでヒットを打つためだという 【写真=BBM】

 その2人が「意味が分からん」と言って感嘆するのが柳田の打撃。内川が言う。「あれだけ飛ばすのって気持ち良いでしょうね」。長谷川が言う。「バッターってボールをとらえることを第一に考えるから、あれだけ振るのは勇気がいるんです」。

 背骨が悲鳴を上げんばかりのフルスイングが持ち味だ。

 根拠はある。
「強くたたけば強い打球になりますし、そうすれば野手の間を抜ける確率が上がります。当てにいって、良いコースに飛ばしても打球が死んでいたら野手に捕られてしまうんで。ヒットを打つには強い打球が必要で、そのためのフルスイング、というのが僕の考えです」

 シンプルだが実践は難しい方法論。あれだけのスイングを続けるのは「正直、しんどい」のだと笑う。

「そのへんが体力なんです。しっかりとした土台をつくらないと、スイングは固まりません」

 このオフは走り込みとウエートトレーニングによる肉体強化に取り組んでいる。15本塁打に終わった昨季の数字が一気に飛躍する雰囲気を漂わせている。

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