マラソン「30キロの壁」はウソ!? 本当の壁は「90分」にあった!

青山剛

スタートして90分後に訪れる「エネルギーの壁」

【Getty Images】

 先ほどお話しした「男子トップランナー」は、1キロ3分のペースで走ります。彼らもこのペースだと、皆さんと同じくギリギリに近いところで走っているわけですが、このキロ3分で30キロ走った経過時間が「90分」になるというわけです。ですから30キロの壁は、キロ3分で走るトップランナーが感じる可能性があるということです。
 では、皆さんのペースはいかがでしょうか?
・「キロ5分」で走れば、18キロ地点
・「キロ6分」で走れば、15キロ地点
・「キロ7分」で走れば、13キロ地点
が、スタートして約90分前後になるでしょう。レベルが違っても、トップランナー同様に全力近くで頑張っているわけですから、実はここで「エネルギーの壁」があるのです。

 従って、90分以上のフルマラソンを頑張って(その方の限界ギリギリで)走る場合は、エネルギー補給を途中でしなければならないのです。邪魔かもしれませんが「エネルギー系ジェル」などをポケットやウェストバックに入れて補給しながら走らないと、ガス欠を起こして走れなくなったり、大幅なペースダウンをしなければならなくなります。

「喉が渇く前に水分補給」「お腹が減る前にエネルギー補給」

【青山剛】

 この話をするとよく「トップランナーは、ジェルを持って(ウェストバックなどして)走っていないのでは?」と突っ込まれるのですが、国際大会のトップランナーレベルだと、「スペシャルドリンク」を預けることができ、その中身にエネルギー系を入れていたりします。しかも、2時間〜2時間30分で彼らはレースが終わってしまうので、実は一般ランナーよりは消費エネルギーも少なくて済んでいるわけです。

「喉が渇く前に水分補給を」は、この数十年でかなりスポーツ界に浸透しましたが、「お腹が減る前にエネルギー補給を」は、まだまだ浸透していません。
 フルマラソンでの後半に失速する理由は主に2つ。
・練習不足(実力不足)でのオーバーペース
・エネルギー不足
の両者かいずれかだということが分かれば、補給の大切さが分かると思います。

 それでもまだ30キロの壁を感じるというのであれば、それは「思い込み=気の持ちよう」だということ。おそらくそれに怯えながら「あと○キロで30キロの壁だ……」と走っているせいでしょう。それに怯えて走るくらいなら、しっかり計画的にエネルギー補給をすることを考えて走りましょう。

適切な補給で「30キロの壁のまやかし」を吹き飛ばす!

【青山剛】

 最後にその補給ポイントです。

・ゴールまで4時間以上かかるランナー=1時間に1個の計算で摂取
・ゴールまで4時間以内のランナー=10キロ、20キロ、30キロ、35キロで摂取
ということは、計算上4個以上は必要となりますが、途中のエイドステーションで多少エネルギー系の食べ物も出たりします。よって、どうしても軽装で走りたいランナーには、「最低3個は持つこと」を指導しています。
 エネルギー系のジェルは水あめ状で、慣れないと摂取しづらいので、上記の時間帯、もしくは距離付近で給水所が見えたら、取り出して封を開けて摂取し、水で流し込むようにするのがベストです。

 しっかりエネルギー補給を行い、「30キロの壁のまやかし」を吹き飛ばして快走しましょう!   

参考資料:「青山剛のスイッチ・ランニング(高橋書店)」(1月5日発売)
初心者〜初級者が正しい手順でランニングを上達していけるメソッドが満載です。

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著者プロフィール

元プロトライアスリート。大学時にプロ活動を開始し、1999年世界選手権日本代表に選出される。その後トライアスリート中西真知子選手のコーチとなり、指導者としての活動をスタート。同選手を2004年アテネ五輪出場に導く。現在は、ランニング、トライアスロン、クロストレーニングのコーチとして競技者から初心者、子供、タレントまで幅広く指導。著書に『ランニング・コアメソッド』『DVDパーフェクトストレッチ100』など多数。(社)日本トライアスロン連合強化チーム・指導者養成委員 元日本オリンピック委員会・強化コーチ

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