W杯優勝国ドイツから学ぶべき心構え 日本中の指導者が集う“勉強会”の3日間

川端暁彦

2年おきに開催される指導者の“大勉強会”

フットボールカンファレンスに講師として出席したドイツサッカー連盟のイゼケからは、ドイツ代表がW杯を制した秘訣が事細かに説明された 【写真:Maurizio Borsari/アフロ】

 1月10日から12日にかけて、東京国際展示場(ビッグサイト)を舞台に日本サッカー協会(JFA)が主催する『第9回フットボールカンファレンス』が開催された。

 このフットボールカンファレンスは2年に1度のペースで開催される指導者の“大勉強会”とも言うべきイベントで、世界各国のコーチや有識者を招いて話を聞くのと同時に、JFAも発表を行って、協会としての考え方を示す場となる。指導者資格さえあれば、どの年代のどんなチームを指導しているのかなどにとらわれることなく参加することができる。

 ワールドカップ(W杯)翌年のカンファレンスではW杯自体をメインテーマに据えるのが慣例となっている。今回も「ワールドカップ2014 ―本気で日常を変えよう―」がメインテーマとして掲げられた。その2日目には「ワールドカップへの準備・戦い」と題して、まずは現役メキシコ代表監督であるミゲル・エレーラが登場。そしてエレーラ監督に続いて登壇したのは、ドイツサッカー連盟のインストラクターであり、U−20ドイツ代表のアシスタントコーチでもあるラルス・イゼケだった。あるベテラン記者がイゼケの講演を「圧巻」と評していたが、私も同様の感想だ。今回は、このイゼケによる「圧巻」の講演内容を詳しく紹介していこうと思う。

ドイツサッカー連盟イゼケによる「圧巻」の講演内容

「ファッションの世界で、『いまは黒がトレンドです』なんて言うでしょう? でもそれは『過去に黒がトレンドでなかった』という意味ではないんです」と言うイゼケは、W杯でも見られた現代サッカーにおける勝敗を分けるポイントとして5項目を挙げた。第1に挙げたのは、『素早い切り替え』。イゼケ自ら「ドイツが新しく産み出した概念ではありません。サッカーの歴史を紐解いていけば最初からあったことです」と言ったように、どちらかのチームがボールを奪った瞬間から攻と守が入れ替わるのは、サッカーの本質的要素。そこがポイントになるのは「今さら」ではあるのだが、先のW杯では、この「今さら」の部分の重要性がより強く印象付けられるものとなったという話である。そして、そのポイントを徹底できているチームが(つまり優勝したドイツが)、やはり強かったのだ。それはフィットネスの問題であり、セレクションの問題であり、何より育成の問題でもある。

 続いて、『セットプレー』についても、「やりたくないなんて言う指導者もいますよね」と笑いつつ、「しかし、大事なんです。決定的な要素がここにあって、トレーニングしないわけにはいかないんです」と強調。この場で語られたセットプレーの具体的トレーニング方法として、競争の概念を持ち込んで二つのチームを競わせるというドイツ代表のスタイルは非常に面白かったし、すぐにでも(それこそ普通の少年団でも)実践できそうなものだった。映像で出てきたトッププレーヤーたちがセットプレーの練習での「1点」に一喜一憂する様は刺激的で、そして示唆に富むものだった。

 3つ目は、『個人の攻撃のクオリティー』。アリエン・ロッベン、ネイマール、リオネル・メッシの3人を「絶対的」とし、「彼らほどの選手はドイツにいなかった」とした上で、だからこそ重要になった4つ目の項目として『チームワークなくして成功なし』の項目を挙げた。5つ目は『ジョーカー』。ブラジルW杯で生まれた171得点の内、32得点が先発しなかった選手によって直接的に生み出され、間接的なものを含めればもっと増える、と。

1/2ページ

著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント