15年シーズン注目は大谷・藤浪世代の野手 “開花の3年目”新成人はプロで飛躍の時

山田隆道

極めて少ない高卒野手の1年目での活躍

今季、飛躍が期待される注目選手は高卒3年目の野手。いわゆる大谷(奥中央)・藤浪世代の新成人たちだ 【写真は共同】

 プロ野球において、高卒でプロ入りした選手が1年目から1軍で活躍するというのは非常に珍しいことだ。

 一般的に高卒選手は即戦力というより将来性を期待されての入団になるため、まずは2軍で数年間鍛えるという育成プランが組まれることが多いからだ。
 しかし、近年はそんな一般論に則さないケースが増えてきた。大谷翔平(北海道日本ハム)と藤浪晋太郎(阪神)は言わずもがな、今やメジャーリーグのエース格になったダルビッシュ有(レンジャーズ)と田中将大(ヤンキース)も、成績の差はあったが高卒1年目から1軍で活躍してきた。彼らがみんな高校時代に圧倒的な実力を示した、いわゆる怪物選手であったことを思うと、そういう桁外れの選手の場合は一般論に当てはめないという柔軟な考えが主流になってきたのかもしれない。これは1999年に高卒1年目でいきなり最多勝(16勝)を獲得した松坂大輔(当時西武、現福岡ソフトバンク)が生み出した流れだろう。

 ただし、先に挙げた選手はみんな投手である。これが野手になってくると、高卒1年目から1軍で活躍するケースは今も昔も極めて少ない。だからこそ、86年に高卒1年目ながら1軍のレギュラーとして3割30本塁打をクリアし、西武ライオンズという時の日本一球団で4番打者にまで抜てきされた清原和博の偉業は、今も伝説として語られるのだろう。松井秀喜(当時巨人)が高卒1年目に放った11本塁打も十分すごいのだが、それがかすむほどである。

イチロー、新庄らが飛躍したプロ3年目

 それでは、そんな高卒野手が後年スター選手に成長していく過程の中で、最も重要になるのは何年目なのか? その答えは、前例の多さから考えると3年目だろう。現在の球界に当てはめると大谷と藤浪の世代、すなわち今年の新成人たちである。

 主な野手としては、二刀流の大谷はもちろん、昨年、高卒2年目ながら1軍で36試合に出場し、3割以上の打率を残した広島の内野手・鈴木誠也、同じく昨年1軍で50試合に出場した千葉ロッテの捕手・田村龍弘、高校時代はその田村とチームメートでともに甲子園を沸かせた阪神の内野手・北條史也、オリックスの外野手・武田健吾らが挙げられる。

 彼らが挑む高卒3年目のシーズン。それは歴代の高卒スター野手の多くが1軍で大きく飛躍した年だ。その最たる例は、ご存知94年のイチロー(ヤンキースFA、当時オリックス)だろう。この年、故・仰木彬監督ならではの奇抜なアイデアによって登録名を本名の鈴木一朗から変更したイチローは、高卒3年目にして初の規定打席に到達し、いきなりプロ野球史上初となるシーズン200本安打をクリア(210安打)。首位打者、最高出塁率、ベストナイン、ゴールデングラブ賞、さらにプロ野球史上最年少でのシーズンMVPのタイトルを獲得し、その後の日米にわたるイチロー伝説の華々しい幕開けとなった。

 また、そのイチローをして「打撃の天才」と言わしめた前田智徳(元広島)が初めて打率3割をクリアし、初のベストナインに名を連ねたのも高卒3年目の92年だ。そして、その前田と同い年で、プロ入り当初は意外にも(?)前田をライバル視する発言をしていた新庄剛志(当時阪神)も高卒3年目の同年に1軍でセンターのレギュラーに定着し、それまで低迷していた阪神をリーグ2位に押し上げる原動力となった。

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著者プロフィール

作家。1976年大阪生まれ。早稲田大学卒業。「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」などの小説を発表するほか、大の野球ファン(特に阪神)が高じて「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。現在、文学金魚で長編小説「家を看取る日」、日刊ゲンダイで野球コラム「対岸のヤジ」、東京スポーツ新聞で「悪魔の添削」を連載中。京都造形芸術大学文芸表現学科、東京Kip学伸(現代文・小論文クラス)で教鞭も執っている。

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