15年シーズン注目は大谷・藤浪世代の野手 “開花の3年目”新成人はプロで飛躍の時

山田隆道

1年目に種まき、2年目に水、3年目に開花

昨秋に行われる21Uワールドカップで活躍を見せた(左から)オリックス・武田、巨人・辻、広島・鈴木、阪神・北條。成人となった今季はチームでの活躍にも期待が高まる 【Getty Images】

 その他にも、高卒3年目で初めて打率3割をクリアした野手といえば立浪和義(元中日)、捕手では城島健司(当時福岡ダイエー)、近年では坂本勇人(巨人)など、錚々(そうそう)たる顔ぶれが並ぶ。古い話をすれば、野村克也が南海で正捕手の座を獲得したのも高卒3年目、張本勲が初の首位打者に輝いたのも東映時代の高卒3年目、さらにドラフト6位入団の無名選手からミスタータイガースと呼ばれるまでに駆け上がった掛布雅之も、高卒3年目に初の打率3割、20本塁打をクリアした。

 もちろん王貞治(元巨人)や衣笠祥雄(元広島)など、4年目に飛躍した高卒のスラッガー(王は4年目に初の本塁打王と打点王を獲得、衣笠も4年目にレギュラー定着と初の20本塁打超え)や、もっと晩成型のスラッガーもいるのだが、その数は少ない。高卒野手の場合、1年目に種をまき、2年目に水をやり、3年目に花を咲かせるというケースが非常に多いのだ。

活躍が期待される成人を迎えた野手たち

 そう考えると、先に挙げた新成人の野手たちの高卒3年目、つまり今年の活躍にはどうしても注目してしまう。

 昨年秋の21U野球ワールドカップにおいて首位打者と大会ベストナイン(外野手)に輝くなど、その打撃センスが注目されている広島の鈴木は、プロ入り時に憧れの選手としてイチローの名前を挙げていた。今年はそのイチローがブレークした高卒3年目だ。思えば広島の先輩・堂林翔太も高卒3年目に全試合出場と2桁本塁打をクリアした前例がある。本人もそのへんは十分、分かっていることだろう。

 また、ロッテ・田村と阪神・北條の元光星学院(現八戸学院光星)組も注目株だ。鳥谷敬の阪神残留により、ショートが本職の北條が、今年いきなり1軍で飛躍するのは難しくなったが、昨年後半に正捕手クラスの英才教育を受けた田村は大いに期待できる。もしも田村が今年ブレークしたら、野村克也や城島健司のような強打の高卒捕手の道を歩むのかもしれない。その意味では、同じ強打の捕手・森友哉(埼玉西武)は高卒2年目の今年より3年目となる来年のほうが楽しみだ。“リアル山田太郎”はどこまで漫画に近づくのだろう。

 さらにプロ入り当初、その身体能力の高さから「新庄剛志2世」と称されたオリックスの武田。その新庄が関西のプロ野球ファンに衝撃をもたらした高卒3年目を、同じ関西の球団に所属する武田はどう過ごすのか。昨年まで1軍出場は数少ない(7試合)が、新庄だって2年目まではそうだった(13試合)。ただでさえ、オリックスの外野には糸井嘉男がいる。もしも武田がそこに並んだら、京セラドームに宇宙人コンビ襲来だ。

 最後に、忘れてはいけない世代の代表格、それは野手としての大谷翔平だろう。高卒2年目の昨年は投手として2桁勝利、野手として2桁本塁打を達成した。しかし、投手としては規定投球回数に達した(規定投球回144回に対し155回1/3)一方で、野手としては規定打席数に届かなかった(規定打席446に対し234打席)。3年目の今年、もしも大谷が規定投球回数と規定打席数にダブル到達して、どちらも好成績を残したとしたら、それはもう、えぐい時代の到来だ。

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著者プロフィール

作家。1976年大阪生まれ。早稲田大学卒業。「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」などの小説を発表するほか、大の野球ファン(特に阪神)が高じて「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。現在、文学金魚で長編小説「家を看取る日」、日刊ゲンダイで野球コラム「対岸のヤジ」、東京スポーツ新聞で「悪魔の添削」を連載中。京都造形芸術大学文芸表現学科、東京Kip学伸(現代文・小論文クラス)で教鞭も執っている。

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