昨年の失敗を生かした矢板中央のDFリーダー星キョーワン

鈴木潤

殊勲の決勝ゴールを決めた星キョーワン(中央)。昨年の失敗を生かし、チームを勝利に導いた 【写真は共同】

 全国高校サッカー選手権の1回戦が31日に行われ、矢板中央(栃木)が松山北(愛媛)を3−2で下し2回戦進出を決めた。

「普段からセットプレーのこぼれは狙っているので、こぼれてきた瞬間はラッキーと思って、ボールに突っ込んだらそのまま入りました。うれしかったです」

 試合終了間際に殊勲の逆転弾をねじ込んだDF星キョーワンは、そういって表情を綻ばせた。

 立ち上がりの5分、星は自分のミスが原因で松山北に先制を許し、「なんとしても取り返さないといけない」と思っていた。さらに、昨年の選手権では1年生ながら出場、そこでほろ苦い経験を味わっていたことを明かす。1年前、四日市中央工(三重)と初戦で対戦した矢板中央は、前半の25分間で3失点を喫した。後半に追い上げ、2点は返したものの、あと一歩及ばずに大会から姿を消した。

「今日は前半は緊張があって、普段自分たちのできていることが全くできていませんでした。去年も、前半に何もできないまま終わってしまったので、去年の二の舞になっては意味がないと思っていました」

 星は1年前と同じ轍は絶対に踏まないと心に誓い、後半のピッチに立った。

 慎重になりすぎてラインを下げてしまったことを猛省し、「前半の悪い内容は自分たち守備陣に問題があったので、強気のラインコントロールで、常にラインは高く設定しました」と恐れずに陣形を押し上げた。それによって劣勢だった流れをガラリと変え、後半は一転して矢板中央のペースへ引きこんだ。

 また、ラインコントロールとともに、星自身がコンゴ民主共和国人の父親の血を受け継ぐ身体能力の高さをいかんなく発揮。松山北の攻撃を跳ね返し、矢板中央の壁として後半は無失点に抑えた。「まだまだ課題は多いです」と苦笑いを見せる星だが、サッカーを始めたのは中学生になってから。そこからメキメキと力を付け、わずか5年で選手権の舞台で勝利を手にするレベルまでたどりついたのは圧巻である。

 自らのゴールで2回戦進出を果たし、次なる相手は優勝候補の一角・流通経済大柏である。フィジカルコンタクトに関しては超高校級の対戦相手。星は「自分たちは一戦一戦を戦うだけです」と控えめなコメントを残すも、「親に感謝したい」と自信をのぞかせる抜群のフィジカルの強さを持つ。星と流通経済大柏攻撃陣とのぶつかり合いは、2回戦の大きな見どころになりそうだ。
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著者プロフィール

1972年生まれ、千葉県出身。会社員を経て02年にフリーランスへ転身。03年から柏レイソルの取材を始め、現在はクラブ公式の刊行物を執筆する傍ら、各サッカー媒体にも寄稿中。また、14年から自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信している。

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