大谷“本気”の勝負で見せたすごみと課題 メジャーも驚く、大きな伸びしろ

中島大輔

手応えと課題をつかんで……

力みからか、ボール・マウンドの違いからか、この日は制球を乱すシーンが随所に見られた。また、カウントを稼ぎにいった球を強打されるなど、収穫と同じくらい課題も見つかった様子だ 【写真は共同】

 初球は真ん中高めのスライダーでファウル。2球目は153キロのストレートが内角に外れ、3球目は内角高めに152キロのストレートでバットに空を切らせる。追い込んで迎えた4球目、内角低めにフォークを落として空振り三振。持ち味とするアグレッシブなスタイルでプイグを打ちとり、ピンチを切り抜けて見せた。

 3回には2点を失った後、1死満塁の場面を無失点に抑えていた。カルロス・サンタナ(インディアンス)を仕留めた154キロのストレートは真ん中寄りにいったものの、相手はよけるような見逃し方だった。続くサルバドール・ペレス(ロイヤルズ)には外角に155キロのストレートを投げ込み、空振り三振に切っている。

 結局、この日の大谷は4回までに68球を投げて、被安打6、2失点。“怪物”と言われるすごみと、課題を同時に見せたピッチングだった。

 収穫は、3、4回のピンチを切り抜けたシーンだ。
「狙いにいったときは空振りをとることができたので、それは良かったです」

 ペナントレース中とは異なる、メジャー対策の攻め方も手応えに挙げている。
「カーブや、いろんな球種を混ぜながらいけたのはすごく良かったと思います。シーズン中には使っていなかったボールですけど、それを使えて良かったなと思います」

 一方の反省材料は、初回から3イニング連続で先頭打者を出塁させたことだ。
「甘く入ったり、カウントを稼ぎにいって気の抜けたボールはしっかりとらえられますし、そういうボールで出塁されることが多かった。特に先頭バッターや、アウトカウントの浅い場面でそういうボールがあったと思います。もちろんフォアボールはいけないですけど、もうちょっと攻めの気持ちを持っていければ良かったと思います」

ファレル監督が絶賛するその才能

 今回の日米野球でMLB選抜が大谷について話すとき、決まって口にしていたのが「若い」「まだ20歳」という言葉だ。大谷はまだ発展途上。その過程でこれだけの投球を見せたことが、メジャーに強烈なインパクトを与えた様子だ。第5戦の後、ジョン・ファレル監督は一気にこう話している。

「大谷はとにかく素晴らしいピッチングをして、いい肩を持っていると思った。今日も100マイル(約160キロ)のボールを投げていた。ストレート以外の球も優れていると感じることができた。今日は少し失投があり、フォアボールもあったので、われわれはそれを利用して得点することができた。彼が備えている身体能力の高さはこれから先、彼にとって素晴らしい将来が待っているんだなと感じさせるものだった。将来のある投手として、どこの野球界においても通用するのではと思えるくらいの素晴らしさだったと思う」

 札幌ドームを去る直前、ミックスゾーンで「メジャーリーグはどんな存在?」と聞かれた大谷は、いつものように謙虚に話した。

「まだまだ手の届かないようなレベルですけど、これから1年、1年積み重ねて、少しは近づいていけるように頑張りたいと思います」

 高卒2年目の20歳、大谷翔平。日米野球第5戦での先発は、参戦したメジャーリーガーたちが心身ともに最も良いコンディションで迎えたという点で、腕試しには絶好のタイミングだった。そこで投げられたことが、何よりの収穫だろう。

 初戦で投げた1イニングと第5戦で先発した4イニングの違いについて、大谷はこう話している。
「こないだは打ち損じがありましたし、甘い球もあったので、あまり参考にはならないかなと思っています。今日はすごく収穫もありましたし、反省しないといけないこともありました。良い終わり方だったなと思います」

 明るい将来が待っているであろう大谷のキャリアにおいて、極めて重要な一戦になったことは間違いない。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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