パトリック・チャンが語る羽生、高橋 来季の復帰に向けて充電中の元世界王者

スポーツナビ

銀メダルに終わるも「ソチでは成長が感じられた」

ソチ五輪銀メダルという結果には満足している 【写真:ロイター/アフロ】

 金メダルの本命として臨んだソチ五輪は羽生結弦(ANA)に続く2位。FSで逆転のチャンスがあったにもかかわらず、4回転トゥーループをはじめ多くのジャンプでミスを犯し、羽生を捕らえ切れなかった。バンクーバー五輪以降、圧倒的な成績を残してきた世界王者のチャンにとって、銀メダルという結果は納得いくものだったとはとても思えなかったが、本人はどう感じているのだろうか。

「満足しているよ。五輪のタイトルを持てることは幸せだし、少し驚きでもある。『Wow! 五輪のメダリストだなんて最高だ!』ってね(笑)。バンクーバー五輪でのことを考えれば、ソチでは成長を感じられたし、素晴らしいことだと思っているよ」

 こちらの予想に反して実にあっけらかんとした答えが返ってきた。もちろんまったく後悔がなかったと言えばうそになるだろうが、現在はほとんど意識することはないという。
「当然、大会直後は『優勝できたら良かったな』と思うこともあった。でもあれから時間がずいぶん過ぎて、今はどれだけ金メダルに近かったかとか、そういうことは気にならないし、満足感すらあるんだ。五輪を経験したことで得たチャンスや、将来のプランもあるし、ラッキーなことにショーもできる。この成功で得たスケート以外の楽しみにも恵まれているのさ」

「もし僕がユヅルの立場だったら耐えられない」

ライバルとして競い合った羽生(左)の姿を、今季は観戦者として見続ける 【写真:ロイター/アフロ】

 ジャパンオープンから10日後の10月14日。長年に渡り、ライバルとして競り合ってきた高橋大輔が現役引退を表明した。チャンと高橋は世界の舞台で何度も顔を合わせ、頂点を争ってきた。惜しまれつつ、競技生活から退いたこの盟友の実力を、チャンはこう評価する。

「これまでお互い競い合ってきたけど、ダイスケとは仲の良い友達だよ。彼は素晴らしい才能の持ち主だし、彼のスケーティングが持つ化学反応やエネルギーは随一だと思う。ジャンプもすごい」

 今後その高橋に代わり、日本のみならず世界の男子フィギュアをリードしていくのがソチ五輪金メダリストの羽生だ。昨季、チャンはGPシリーズの2試合で羽生に連勝したものの、ファイナルと五輪では逆に連敗を喫した。一方が世界歴代最高得点を記録すれば、もう一方がそれに負けじとさらなるスコアをたたき出す。チャンは新たなライバルをどう見ているのか。

「ユヅルは若いし、まだキャリアを始めたばかり。僕が彼の年齢(19歳)のころはバンクーバー五輪に出場していた。ユヅルは怖いもの知らずなのか重圧を感じていないように見える。いや、日本ではプレッシャーがすごいのかな。もし僕が彼の立場だったら耐えられないと思う」

 今季を休養に充てるチャンは、いち観戦者として羽生の姿を追っていくようだ。

「五輪と世界選手権という2つの最高峰の大会で優勝して、これから彼がどうプレッシャーと付き合うかに注目している。彼は若くしてあっという間にトップに立った。今季のスケーティングが楽しみだよ。彼と競わず、ただその様子を見届けられるというのはいいことだね」

 そう笑顔を見せるチャンが、競技生活に戻ってくるのは来季。復帰すれば、再び羽生の障壁となるのは間違いないだろう。

(取材・文 大橋護良/スポーツナビ)

2/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント