パトリック・チャンが語る羽生、高橋 来季の復帰に向けて充電中の元世界王者
銀メダルに終わるも「ソチでは成長が感じられた」
ソチ五輪銀メダルという結果には満足している 【写真:ロイター/アフロ】
「満足しているよ。五輪のタイトルを持てることは幸せだし、少し驚きでもある。『Wow! 五輪のメダリストだなんて最高だ!』ってね(笑)。バンクーバー五輪でのことを考えれば、ソチでは成長を感じられたし、素晴らしいことだと思っているよ」
こちらの予想に反して実にあっけらかんとした答えが返ってきた。もちろんまったく後悔がなかったと言えばうそになるだろうが、現在はほとんど意識することはないという。
「当然、大会直後は『優勝できたら良かったな』と思うこともあった。でもあれから時間がずいぶん過ぎて、今はどれだけ金メダルに近かったかとか、そういうことは気にならないし、満足感すらあるんだ。五輪を経験したことで得たチャンスや、将来のプランもあるし、ラッキーなことにショーもできる。この成功で得たスケート以外の楽しみにも恵まれているのさ」
「もし僕がユヅルの立場だったら耐えられない」
ライバルとして競い合った羽生(左)の姿を、今季は観戦者として見続ける 【写真:ロイター/アフロ】
「これまでお互い競い合ってきたけど、ダイスケとは仲の良い友達だよ。彼は素晴らしい才能の持ち主だし、彼のスケーティングが持つ化学反応やエネルギーは随一だと思う。ジャンプもすごい」
今後その高橋に代わり、日本のみならず世界の男子フィギュアをリードしていくのがソチ五輪金メダリストの羽生だ。昨季、チャンはGPシリーズの2試合で羽生に連勝したものの、ファイナルと五輪では逆に連敗を喫した。一方が世界歴代最高得点を記録すれば、もう一方がそれに負けじとさらなるスコアをたたき出す。チャンは新たなライバルをどう見ているのか。
「ユヅルは若いし、まだキャリアを始めたばかり。僕が彼の年齢(19歳)のころはバンクーバー五輪に出場していた。ユヅルは怖いもの知らずなのか重圧を感じていないように見える。いや、日本ではプレッシャーがすごいのかな。もし僕が彼の立場だったら耐えられないと思う」
今季を休養に充てるチャンは、いち観戦者として羽生の姿を追っていくようだ。
「五輪と世界選手権という2つの最高峰の大会で優勝して、これから彼がどうプレッシャーと付き合うかに注目している。彼は若くしてあっという間にトップに立った。今季のスケーティングが楽しみだよ。彼と競わず、ただその様子を見届けられるというのはいいことだね」
そう笑顔を見せるチャンが、競技生活に戻ってくるのは来季。復帰すれば、再び羽生の障壁となるのは間違いないだろう。
(取材・文 大橋護良/スポーツナビ)