6試合4ゴールとブレイク中の本田圭佑 監督のノウハウと練習態度が結果に現れる
再生の鍵は動きの変化
得点に向かう一つの形を会得した本田は、この勢いをそのまま公式戦へと持ち込んだ。右足、頭と部位は違うが、似たような形でマークを外し、相手ゴールを陥れている。開幕のラツィオ戦(3−1)では、左サイドでエル・シャーラウィがドリブル突破を仕掛けたのに合わせて激走。6、70メートルの距離を走った後に右足でシュートを放っている。第2節のパルマ戦(5−4)では、右サイドのスペースを空けてサイドバックのイグナツィオ・アバーテを上がらせ、中央へ走り込んで右クロスをヘッドで合わせた。第3節(vs.ユベントス/0−1)ではジャンルイジ・ブッフォンに至近距離でセーブされたものの、やはり外から中へと走ってマークを外す動きでジョルジョ・キエッリーニのマークを逃れ、左からのアーリークロスを頭で合わせている。
こうなれば、4−3−3の右であろうと4−2−4の右であろうと、変わらずにサイドから中へと絞ってゴールへと絡む。4節のエンポリ戦(2−2)ではフェルナンド・トーレスが空けた前線のスペースへ入り込み、アバーテからのパスを受けて正確なミドルシュートを突き刺している。
「本田はサイドを開けてくれるようになったので、自分もとても動きやすくなった」とアバーテは連係の向上ぶりについても言及している。ゴールを意識させることで、プレー全般にキレが蘇る。現役時代のインザーギはポジション取りの巧みなFWだったが、下部組織で指導していた時代も念入りにスペースを使う動きを若手に教え込んでいた。いわば本田の再生は、インザーギが現役の頃から培ったノウハウの延長上にあったというわけだ。
ゴールを意識したもう一つの理由
だがインザーギは、キエーボ戦後の記者会見で「いや、すべては本田一人の功績だよ」と言い切った。
「技術的なことももちろん、態度の上でも素晴らしいものを私に見せてくれている。練習には2時間前に来て、2時間後に帰るんだ。本田の意欲は旺盛で、そのことに私はとても満足している。そしてこの素晴らしい資質は、彼が練習合流直後から見せていたものだ。『彼の獲得は失敗だった』などとレッテルも貼られていたが、そういった連中にリベンジを果たしているという意味でも胸が空く思いだ。シーズンはまだまだ長いが、見通しは非常に明るいものになったね」
ゴールを意識することを糸口にミランで再生を果たした本田だが、その背後にはわれわれも良く知っている人物のアドバイスもあったようである。一般紙『ラ・レプッブリカ』のステファーノ・スカッキ記者は、こんなエピソードを明かした。
「(アルベルト・)ザッケローニ監督にこの間取材をしたんだ。そうしたら本田の話になって、こういうことを言っていた。『私はケイスケがセリエAでもたくさんゴールを決められるはずだと思っていた。アシストで実績を残すこともいいのだが、やはりゴールをもっと意識して欲しいと、そう彼にも伝えた』ということだ」
セリエAに挑んだ外国人の攻撃的プレーヤーは、ゴールを意識することでリーグに順応し、ブレイクに成功した。少し前のミランで言えばアンドリー・シェフチェンコやカカがそうだが、そういう意味では本田も同様の成長プロセスを辿りだしたということか。6試合で4ゴール。現実にはペースダウンも経験するだろうが、仮にこのまま進めばシーズン終了時には24ゴールに到達してしまう。ともかくインザーギの言う通り、2年目の見通しは明るいものになってきた。