高橋建が描く、カープ逆転Vへのシナリオ、「迷っている」前田健太の復活が絶対条件

ベースボール・タイムズ

9月3日の巨人戦、5回に長野久義(奥右)に2ランを浴び厳しい表情を見せる前田健太。OB高橋建が絶対的エースの不振の原因を語った 【写真は共同】

“23年ぶりV”は果たして実現可能か? 残り1カ月を切ったペナントレースだが、依然として激しい優勝争いが続いている。9月2日から巨人との首位攻防3連戦で痛恨の3連敗を喫した広島だったが、その後は白星を重ね、首位・巨人に必死に食らい付いているのだ(11日現在、4ゲーム差)。諦めるつもりなどない。広島で15年間過ごし、ニューヨーク・メッツでもプレーしたOB高橋建氏に、赤ヘル軍団“奇跡の逆転V”へのシナリオを聞いた。

悪い流れをリセットできる“若さ”と“勢い”ある

―――交流戦で急失速した後、7、8月と一進一退の状態が続いた今季の広島ですが、夏場以降の戦いぶりをどう見ますか?

 波に乗り切れなかった、という面はあると思います。ただ、交流戦での9連敗のころのことを考えると、また優勝争いへ復活してきた若々しさというか、その勢いはすごく感じましたね。交流戦ではどのチームよりも弱く見えたし、「やっぱりカープってこんなものなのかな」と落胆しそうにもなりました。あそこから這い上がれたことで、より強いチームになったと言えます。

―――そこから再び首位に1ゲーム差まで迫った広島ですが、9月2日からの首位攻防戦で巨人に3連敗してしまいました。やはり選手がプレッシャーなどを感じていたのでしょうか?

 チームの勝負弱さが露呈した感じでしたね。あの3連戦は、普段よりも勝ちにいく姿勢が強かった。その意識が強過ぎたのかもしれません。意識していないと信じたいところですが、結果を見る限りは3試合で計36残塁……。今までだったら満塁のチャンスでは、どんどん点が入っていたのに、入らなかったということは、やっぱりプレッシャーなのかなと思います。普段の野球ができていなかった、ということを感じましたね。

―――その首位攻防戦までは大事な試合でも勝負強さを見せて勝てていた印象もありますが?

 いや、後半戦からマエケン(前田健太)を3連戦の頭に投げさせて、「初戦を確実に取る」と言いながら、実際は勝てていないですよね。だから首脳陣が思い描いていた戦い方はできていません。誤算がありながらも8月後半から巻き返すことができたのは、他の選手、ピッチャーで言えば福井優也や途中入団のヒースなど、意外と言えば失礼だけど、そういった選手たちが頑張ったからというのが正しいと思います。残念ながらジャイアンツに3連敗しましたが、その後のベイスターズ戦、ドラゴンズ戦と2カード連続で勝ち越したのも、そういう選手たちの頑張りがあったから。以前のチームなら、あそこからズルズルいってもおかしくなかったはずです。そう考えると、まだまだ今のカープには悪い流れをリセットできる“若さ”と“勢い”があります。

エース・前田健太は「本来の投球ができていない」

―――今季の前田投手は“今ひとつ”という印象が否めませんが、何か技術的な問題などはあるのでしょうか?

 技術的には大きな問題はないと思いますが、あえて言うなら、シュートの質が、右打者の懐をえぐりきれていない、ということは感じます。ただ沈んでいるだけの球で、それでも武器にはなるのですが、本人が本当に投げたい球とは、少し違うのではないかと感じます。それからスライダーも今年は抜けた球、いわゆる“抜けスラ”というものが多いですね。それ自体もレベルが高いボールなので、打者には脅威にはなるのですが、横の揺さぶりという点では、本来の投球ができていない部分があるのではないかと思います。

―――技術以外の部分で何か原因があるのでしょうか?

 今のマエケンは、自分の投球だけに集中できない状況にあるのではと感じています。彼ぐらいの立場になると、どうしても「チームのために」、もっと言えば「日本球界のために」というようなことを言われる。技術とは別の精神力というものを問われていると思います。それは一流選手だからこそですが、今年はメジャー移籍などの話もあったりして、今まで以上の重圧がかかっているでしょうし、いろいろな面で迷っている部分もあるんだと思います。

―――今年は雨の日が多く、8月15日の巨人戦(マツダスタジアム)では激しい雨が降る中、3回6失点でKOされました。その後のマウンドでの姿勢を問われたところもありましたが?

 不運ではありましたね。あれだけ彼の投げる試合で悪天候が続くと、さすがに厳しいですよ。僕も雨の中で完投したことがありますが、ああいった状況での登板は1試合だけでもかなりキツイものです。そこを乗り越えてこそ“エース”という声もありますが、あれだけ何度も何度も登板日に雨が続くと、神経も相当にすり減っていくはずです。とにかく今年に関しては、野球だけに集中できている状況になかったと思います。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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