2014年最注目の八重樫vsロマゴン=9月のボクシング興行見どころ

船橋真二郎

5日は八重樫、井上尚、村田ら豪華共演

ことし4月、3度目の防衛を果たした八重樫をリングに上がって祝福したロマゴン。9月5日には両者がタイトルマッチで激突する 【t.SAKUMA】

 9月の最注目は、5日の東京・国立代々木競技場第二体育館ということになるのだろう。WBC世界フライ級王者の八重樫東(大橋)が39戦全勝(33KO)を誇る元世界2階級制覇王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)を挑戦者に迎える一戦は、「2014年の最注目カード」と言い換えてもいい。そんな大一番に、今年4月に国内史上最速の6戦目で王座に就いたWBC世界ライトフライ級王者の井上尚弥(大橋)が臨む初防衛戦、プロ5戦目を迎えるロンドン五輪金メダリストでWBC世界ミドル級12位の村田諒太(三迫)が華を添えるのだから、何とも豪華な興行である。

 さらには11戦全勝(9KO)で日本スーパーフライ級8位にランクされる松本亮(大橋)が、元WBA世界フライ級王者デンカオセーン・カオウィチット(タイ)に挑戦する一戦にも注目したい。井上と同学年で高校4冠を達成している20歳のホープは、日本のリングでもお馴染みの老かいな38歳に対し、能力の高さを示して世界ランク入りを果たせるか。また、井上の弟でWBAライトフライ級9位にランクされる井上拓真(大橋)の3戦目も行われる。

過去にも多くのドラマがあった代々木第二

 この代々木第二で初めてボクシングの世界戦が行われたのは1998年9月22日。奇しくも現在、八重樫のトレーナーを務める松本好二氏の通算3度目、国内では初の世界挑戦試合だった。スキンヘッドの風貌と強打のサウスポーの共通項から、ミドル級の往年の名王者マービン・ハグラー(アメリカ)になぞらえて“リトル・ハグラー”と呼ばれたフレディ・ノーウッド(アメリカ)に10回TKO負けし、これが松本氏の最後の試合となった。

 それから11年の時が流れた2009年10月10日、当時27戦全勝(18KO)の2階級制覇王者ホルヘ・リナレス(帝拳)がまさかの初回TKO負けで王座から陥落したのもこの会場だ。さらに2年が過ぎた2011年11月6日には、山中慎介(帝拳)が11回TKO勝ちで決定戦を制してWBC世界バンタム級のベルトを手に入れ、ここから5連続防衛(4連続KO防衛中)の快進撃が始まった。引退を懸けた強豪への挑戦、衝撃の番狂わせ、ニューヒーローの誕生……同じ舞台で今回はどんなドラマが生まれるだろうか。

井岡、世界ランク14位と後楽園で復帰戦

ことし5月、IBF世界フライ級王座に挑戦してルエンロエンに判定負けした井岡が9月16日に後楽園ホールで再起戦に臨む 【写真:AFLO】

 16日には元2階級制覇王者の井岡一翔(井岡)の復帰戦が、東京・後楽園ホールで行われる。5月に3階級制覇を狙ってIBF世界フライ級王者アムナット・ルエンロエン(タイ)に挑戦し、判定負けで初黒星を喫した井岡が迎えるのはWBA世界フライ級14位のパブロ・カリージョ(コロンビア)。アムナット戦では9センチのリーチ差にも苦しめられたが、記録サイトによるとカリージョの身長は154センチ。あくまで数字上の話だが、165センチの井岡の側に距離の優位性はありそうだ。

 カリージョと名の知られた強豪との対戦は2年前、強打の元WBA世界フライ級王者ルイス・コンセプシオン(パナマ)に敵地で連敗したくらいだが、いずれも判定に持ち込んだ。コンセプシオン戦の映像を見る限り、思い切り良く左右のフックを振ってくるファイタータイプ。本来の力を発揮できれば、井岡が主導権を取って展開を優位に運ぶことはそう難しくなさそうだが、再起戦は誰にとっても簡単ではない。カリージョにとっては、この一戦がビッグチャンスであることも忘れてはならないだろう。不用意な被弾は禁物だ。

世界王座返り咲きを狙うツニャカオと宮崎

ことし5月は計量失敗から3回KO負け(右)を喫した宮崎。ベストなコンディションで再起戦に臨めるか!? 【写真は共同】

 16日の前座には世界王座返り咲きを狙う2選手が登場。セミファイナルでは元WBC世界フライ級王者のマルコム・ツニャカオ(真正)が日本スーパーフライ級6位の大塚隆太(18鴻巣)と拳を交える。ツニャカオは昨年4月、12年ぶりの世界戦にこぎ着けたが、山中の前に最終12回TKOで散った。再起後は2連勝で現在はWBCスーパーフライ級4位にランクされる36歳のベテラン。対するスピードが武器の大塚は、昨年11月に帝里木下(千里馬神戸)の日本タイトルに挑戦し、5回負傷判定負けしたのが唯一のタイトル挑戦歴。不利予想は否めないところだが、失うものはないとも言える。

 もうひとりは前WBA世界ミニマム級王者の宮崎亮(井岡)。ベルトを返上し、2階級制覇へのテストマッチとして臨んだ昨年大みそかのライトフライ級8回戦で減量に失敗。3回KO負けの惨敗で初黒星を喫して以来、9カ月ぶりの再起戦でインドネシアランカーと対戦するが、相手どうこうよりもベストコンディションでリングに上がることが復活への第一歩となる。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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