九州バスケ界が垣根を越えた新たな挑戦 選手発掘の裾野を広げた3日間のキャンプ
今までにない形のキャンプ
2泊3日で行われたキャンプには、プロを目指す高校生以上の選手たち約50人が集まった 【河合麗子】
九州北部が梅雨明けを迎えた7月の3連休、福岡県太宰府市の日本経済大学で開催された「NBL/NBDLチャレンジキャンプin九州2014」。バスケクリニックとトライアウト、2つの要素を兼ね備えたこのイベントに、プロを目指す高校生以上の選手たち約50人が集まった。
このイベントの特筆すべきポイントは2つある。
1つは通常2〜3時間で行われるトライアウトを2泊3日で行う内容の充実さ。そしてもう1つは、NBL/NBDLが後援を務めるこのイベントに、bjリーグのチームも協力して参加したことだ。
講義、体のケア、トライアウトの内容説明、ピックアップゲームなど、2泊3日のバスケ漬けの講習が始まった。
垣根を取り払った“合同トライアウト”の要素も
熱いまなざしでキャンプを見守る各チームの関係者たち 【河合麗子】
そんな中、チャレンジキャンプでは、下記のような講習も実施された。
参加者を6チームに分け、6人のコーチのもとNBL/NBDL・bjリーグ6チーム(リンク栃木、熊本ヴォルターズ、東京エクセレンス、レノヴァ鹿児島、ライジング福岡、大分ヒートデビルズ)の昨季のフォーメーションでゲームを実施。各フォーメーションを短い時間で理解し、自分の特性をどう表現するかを指導するとともに、翌日にはさらにチームを替えて再びゲームを実施し、早い対応力の必要性を説いた。参加者たちは自分がゲームをしていないときも他のコーチのゲームを観察し、翌日に備えなければならない。そしてその評価は、最終日に参加者達のランク分けが発表されることで、まざまざと今の自分の実力を感じることとなる。
九州バスケットボール協会の鮫島俊秀理事長はこう語る。「ランク分けを行うことで今の実力を知らせることも大事、それでも這いつくばって夢を追いかけるなら追いかければいい。一人ひとりがバスケについて自分の表現の仕方を考えぬいてこそ、成熟したマーケットが生まれる」
統合問題に揺れる日本バスケ界にあって、なぜこの形が可能になったのか、鮫島理事長に聞くと「リーグは統一していなくても、“九州という地域”にリーグ間の垣根はない」と語る。ライジング福岡(bjリーグ)の井上一馬取締役は「リーグ間のしがらみはない、九州バスケの底上げに協力したい」と語り、アドバイザーとして参加したリンク栃木ブレックス(NBL)の鎌田眞吾社長も「垣根を取り払うことは刺激になる、bjリーグの良い要素はどんどん取り入れたい」と語った。
実際、bjリーグ開幕10年目を迎える今季は、NBLとbjリーグチームの交流試合がこれまで以上に開催され、今年6月には日本バスケットボール選手会主催の東日本大震災復興支援イベントにNBLとbjリーグの選手がそろって参加した。
統合問題が取りざたされる中、さまざまな形で日本バスケ界に危機感を抱くバスケの“現場”で生きる人々が、その垣根を取り払いつつあるのだ。