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Jr.銅の桐生祥秀に海外から賛辞の声
誠実なメディア対応にも高評価

日本人初のメダル獲得の快挙

男子100メートルで日本勢初となる銅メダルを獲得した桐生に、海外メディアや関係者も賛辞を送った
男子100メートルで日本勢初となる銅メダルを獲得した桐生に、海外メディアや関係者も賛辞を送った【写真は共同】

 スタジアムでレースを見守ったほとんどの人が、息をすることさえ忘れていたのではないだろうか。そんな張りつめた空気がスタジアムには流れていた。


 陸上の世界ジュニア選手権(米国・ユージーン)の男子100メートル決勝、号砲で飛び出したのは2レーンの桐生祥秀(東洋大)。50メートルほどまで力強い走りで先行した。だが、準決勝のレース中に股関節に違和感を覚えた影響からか、桐生は後半伸び悩む。5レーンのケンドル・ウィリアムズ(米国)が伸びやかなフォームでトップに立つと、8選手は体を大きく前傾し、フィニッシュラインになだれ込んだ。勝ったのは赤いユニフォームを身にまとったウィリアムズ。6レーンのトレイボン・ブロメル(米国)が2位に入り、2レーンの桐生が3位争いを制した。


 ウィリアムズは10秒21で、大舞台で自己ベストを0秒02更新し、金メダルを獲得する大金星。ブロメルは10秒28、桐生は10秒34でジュニア・シニアを通じて世界選手権、五輪の男子100メートルでは日本人初となるメダルを獲得した。スタンドから投げ込まれた日の丸を受け取ると、桐生ははにかみながらカメラマンたちのリクエストに応じた。 


 激闘を制したウィリアムズとブロメルが星条旗を、桐生が日の丸を掲げながら3人でウィニングランを行うと、集まった観客からは大きな拍手が送られた。ジュニアの選手らしい、初々しいウィニングランに観客たちも笑顔で応じた。

 スプリント界の新しいスターを温かい目で見ながら、1992年世界ジュニアで短距離2冠を達成し、現在は解説者として活躍するアト・ボルドンは興奮ぎみにこう話した。

「3人とも素晴らしい走りだった。桐生は才能あふれる選手だ。ケガをして十分な練習を積めない中でよくやった。これからが楽しみだ」


 早くに才能を開花させたものの、その後、伸び悩むジュニア選手は少なくない。昨年、10秒01の好記録を出した後に出場したダイヤモンドリーグ、世界選手権では、桐生は世界にアピールする走りをできなかったため、「10秒01の走りはフロックだったのか」と感じた関係者もいただろう。だから、今大会で結果を出した桐生の才能を再評価した人もいるのではないか。ブロメルも桐生も早い段階からシーズンインし、連戦をこなして臨んだレース。レース後は2人とも足を引きずっていたこともあり、「疲れや痛みがある中でよく走った」という意見も多く聞かれた。

大会前は優勝候補・ブロメルの陰に……

 昨年4月、17歳の桐生が出した10秒01は衝撃的だった。「高校生」、「17歳」、「日本人」というキーワードは世界の陸上界を震撼させるのに十分だった。

 だが、今大会前、優勝候補として挙げられたのは、6月の全米学生選手権で世界ジュニア記録となる9秒97を出したブロメル(米国)。昨年、追い風参考記録ながら9秒台を出しているブロメルは、今年も好調で、3月末のテキサスリレーでも10秒01の世界ジュニアタイ記録を出すなど、一歩抜きん出る結果を出していた。大会前に行われた国際陸連主催の記者会見でもブロメルは、“米国のエーススプリンター”“絶対的な金メダル候補”として名を連ねていた。


 しかし、この記者会見のMCを務めたボルドンは、試合前に不満げにこう話していた。

「ブロメルの陰に隠れているけれど、桐生も今季、素晴らしいタイムで走っているじゃないか。国際陸連は桐生も記者会見に呼ぶべきだったのに」


 前述した記者会見には、メダル候補の選手が呼ばれていた。参加した選手は5人で、競技別の内訳は短距離1人、中長距離2人、投てき2人、国別に見ると米国2人、オーストラリア、スウェーデン、エチオピアからそれぞれ1人だった。以前から、「いろいろな国の選手が活躍すると、陸上はもっと盛り上がる」と話しているボルドンは、アジア選手の不在、とりわけ大会の華になるスプリント種目の選手がもう一人いれば会見ももっと盛り上がるのに……と不満が残ったのかもしれない。

「桐生に『期待している。頑張れよ』って伝えてくれ」

 怒ったような表情でボルドンは話していた。

及川彩子

米国、ニューヨーク在住スポーツライター。五輪スポーツを中心に取材活動を行っている。(Twitter: @AyakoOikawa)

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