Jr.銅の桐生祥秀に海外から賛辞の声 誠実なメディア対応にも高評価
今季は好調 10秒01の実力を証明
国際大会ではなかなか結果を残せずにいた桐生(写真中央)が、今大会でメダルを勝ち取った意味は大きい 【写真は共同】
それでもボルドンと同様に、メディアや関係者には、桐生に注目をしている人もいた。国際陸連の世界ジュニア選手権のページでは、大会前に「今大会で注目すべき10選手」の一人として桐生が取り上げられている。「去年、ピンクのランニングパンツを身につけた桐生が出した10秒01の動画は、10万回以上再生された。今季は世界室内にも出場している」と紹介された。
余談になるが、洛南高時代のピンクのランニングパンツは海外の関係者や陸上ファンのツボにはまったようで、「ランンニングパンツの色を変えれば、すぐに9秒台が出せる」といったコメントを見たり、実際に聞いたことがある。欧米では男子選手がピンク色を身につけることは少ないため、彼らには新鮮に映ったのだろう。
大舞台でのメダル獲得の意味は大きい
決勝後のインタビューでも、レースの感想、今後の目標、どうしたら強くなれるかなど、的確に答えていた姿も印象的だった。ブロメル、桐生ともに疲労や足の痛みについては口にしなかったため、「スポーツマンらしいな」と国際陸連のスタッフライターも感心しきりの様子だった。
世界ジュニアの金メダルを目標にしてきた桐生にとって、銅メダルは決して満足できる結果ではない。レース後のインタビューでも「うれしさと悔しさが半々」とやや複雑そうな表情で話した。金メダル、9秒台という期待をしていた人には物足りない結果かもしれないが、ジュニア・シニアを通じて国際大会の男子100メートルで初のメダル獲得は、日本の陸上史に残る快挙。10秒01の大記録をうち立ててから1年3カ月、大きなプレッシャーを背負ってきた18歳の桐生が、大舞台でメダルをとった意味は大きい。
6月中旬の足の故障の影響で満足に練習もできず、一時は欠場も考えたこと、そして準決勝、決勝で足を痛めながらも走り切り、最後は気持ちでもぎとった銅メダルはその色以上の価値を持つ。
桐生を含め、今大会に出場しているジュニア選手は、東京五輪が行われる6年後には23、24歳になり、シニア選手として活躍が期待される。ただ、東京五輪でも好結果を……そう考えるのは早計だろう。
桐生自身は当然、東京五輪を視野に入れているが、その前にクリアしていくべきレースや課題がある。メダルや9秒台は、場数を踏めばきっとついてくるだろう。その時が来るのを、楽しみに待とうと思う。