日本代表は常に“最強”である必要はない=ザックジャパンの4年間 第3回・戦力編
本田(写真)のミランをはじめ、海外ビッグクラブに所属する選手も多く、“史上最強”の呼び声も高かった日本代表。その選手選考について考える 【写真:FAR EAST PRESS/アフロ】
今回スポーツナビでは、日本代表がアルベルト・ザッケローニ監督と歩んできた4年間を振り返り、日本サッカーの成長と発展、そして指揮官が日本にもたらしたものは何だったのかを論じる。
第3回のテーマは日本代表の「戦力」について。マンチェスター・ユナイテッド(香川真司)、ミラン(本田圭佑)、インテル(長友佑都)といった欧州ビッグクラブに所属する選手も含め、多くの海外組を擁しただけに“史上最強”との呼び声も高かった今回の日本代表。4年間、ベースとなる選手は変わらず戦ってきたが、その選手選考にどんな課題があったかを考察してみる。
海外所属選手が増え“名前負け”しない陣容だったが……
代表23人のうち、海外主要リーグに所属するメンバーは12人。“名前負け”はしない陣容だったが…… 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
それを裏付けるように、日本の評価はそれなりに高かった。ブラジル人のある記者は「今大会で最も期待していたチーム」に日本の名前を挙げたほどだ。それだけに、今大会でのパフォーマンスについては心底残念だと語った。
「本田と香川はもっとできるはずだと思った。タレントがいるのに、チームとしては2010年から成長したとは言えない」
タレントの数は明らかに増えた。だが、前回大会のベスト16を上回るどころか、1勝すらすることができなかった。個々の能力をデータ化すれば、南アフリカ大会に比べて今回のチームのほうが明らかに上回っているはず。それなのに、日本はなぜ「戦力」に見合った結果を出せなかったのか? そこには大きく3つの理由が考えられる。
本田と香川は代えられなかった
米国合宿中に行われたザンビアとコスタリカとの親善試合でザッケローニ監督は「本田と香川はコンディションを上げる必要がある」と長時間プレーさせた。それは彼らが所属クラブでコンスタントに試合に出られず、パフォーマンスを落としていたからだ。また、長谷部誠、内田篤人、吉田麻也の3人もけがから復帰したばかりで、実戦経験が不足。チームの完成度を高めることが目的だった直前合宿は、主力選手の試合勘を取り戻させることがメーンテーマとなってしまった。
調子が悪い選手がいても、思い切って入れ替えることができない。これはザックジャパンのチーム作りに起因している。4年間、ザッケローニ監督はコアメンバーを変えてこなかった。ほとんどの選手は就任5カ月目に開催された11年1月のアジアカップで主力としてプレーし、優勝を果たしたメンバーたちだった。
アジアカップのメンバーを重視したのは、彼らが世界と戦い得るポテンシャルを持っているからだと考えたからだろう。実際にザッケローニ監督は常々「日本はコンディションさえ良ければ世界のトップレベルとも戦える力がある」と語っていた。だが、肝心の本番でコンディションが上がってこなかったことが想定外だった。
とはいえ、本田と香川の代わりになるような選手が今回のチームにいなかったことも事実だ。アルゼンチンで言えばリオネル・メッシを外すことができなかったように、日本に限らず、どこの国もスター選手に大なり小なり依存しているものだ。今回の日本で言うと、本田と香川という“スター”に依存していたため、彼らの調子が悪かったことが理由になってしまった。