奇跡を信じられなかったC・ロナウド 不運と必然が重なったポルトガルの敗退

工藤 拓

大会初ゴールにも喜びはなかった

第3戦のガーナ戦に勝ったものの、得失点差でグループリーグ突破を逃したポルトガル。初戦の大敗が痛かった 【写真:ロイター/アフロ】

 DFのクリアミスがゴール前上空に浮き上がり、焦ったガーナのGKファタウ・ダウダが前方に小さくボールを弾き出す。左足でそのボールをゴール右隅に蹴り込むと、クリスティアーノ・ロナウドは険しい表情のままゆっくりとセンターサークルへと戻っていった。

 6月26日(現地時間。以下同)に行われたワールドカップ(W杯)グループステージ第3戦、ポルトガルはエースが決めた今大会初ゴールにより2−1でガーナを下したものの、得失点差で米国に及ばずグループ3位で大会を終えた。

 1勝1分1敗に終わったポルトガルのグループリーグ敗退は、不運と必然が重なった結果だったように思える。とりわけドイツに大敗した第1戦は、今大会のポルトガルを象徴する一戦だった。

 開始10分にジョアン・ペレイラが与えたPKで先制を許すと、32分にはCKからあっさり追加点を献上。さらに37分、ペペが愚かにもトーマス・ミュラーに頭突きを見舞い、一発退場となった。この時点で実質的に勝機は尽きた。

 10人で0−2の窮地に立たされたポルトガルに対し、ドイツは容赦なく2ゴールを追加。結果0−4と大敗したことで、ポルトガルは予想通りの混戦となったグループの明暗を分ける得失点差で、取り返しのつかないビハインドを負うことになった。

大きな痛手となったコエントランの負傷

 初戦の入りの悪さ、状況が悪化するとあっさり気持ちを切らせてしまう『自滅癖』といった伝統の勝負弱さは、大敗を招いた必然である。
 だがこの一戦でセンターFW(CF)のウーゴ・アウメイダ、左サイドバック(SB)のファビオ・コエントランをケガで失ったのは不運が招いたトラブルだった。

 もともと、誰を使ってもいまいちだったセンターFW(CF)はまだ良かったが、コエントランの離脱はあまりにも痛すぎた。レアル・マドリーでマルセロから定位置を奪った昨季終盤、彼はここ数年で最高のプレーを見せていた。しかも代表では守備はもちろん、開幕直前のテストマッチでは欠場したC・ロナウドの代役として左ウイングも務め、攻撃面でも重要な役割を果たしていたのだ。

 さらに困ったことに、パウロ・ベント監督は彼以外に本職の左SBを招集していなかった。そのため残る2試合では、このポジションが攻守ともにチームのアキレスけんとなってしまう。

 米国との第2戦で先発したアンドレ・アウメイダは右利きの右SBであり、攻撃面で深いえぐりが期待できない。しかも彼は守備面でも相手の右SB、ファビアン・ジョンソンの攻め上がりに対応できなかった。

 米国戦の後半、ガーナとの第3戦で起用されたミゲウ・ベローゾはこれまでも代表では左SBでプレーすることが多かったものの、ピボーテが本職である。彼もまた、守備時はポジショニングのズレがたびたび生じ、攻めてはクロスの精度不足が目立った(ガーナ戦の先制点となったオウンゴールは彼のクロスから生まれたが……)。

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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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