コスタリカが“死の組”を突破できた訳 スタイルを貫き、新たな歴史を築けるか?
日本戦で露呈していた弱点はどこへ?
初戦はウルグアイに1点のリードを許しながら、後半に3ゴールを奪い逆転勝ち。2戦目は組織的な守備でイタリアを封じ込め、ブライアン・ルイスが挙げたゴールを守り切った。こんな展開になるとは、誰も予想できなかったはずだ。筆者は今までにコスタリカの試合を数多く見てきたが、この2試合はいずれも彼らにとってのベストバウトと言えるものだった。彼らはなぜ、格上と見られていたウルグアイとイタリアを撃破することができたのか。決勝トーナメントでも、その躍進を続けることはできるのだろうか。
ウルグアイ戦が行われる直前に掲載したコラム(※関連リンク「『死の組』のカギを握るコスタリカ」参照)で述べた通り、従来のコスタリカにはいくつかの弱点があった。
・後半半ばを過ぎると集中力が途切れやすくなる。
・守備が後手に回りやすい。
・選手層が薄い。
日本とのテストマッチ(1−3)をご覧になった方なら、上記のウイークポイントを理解していただけるはずだ。コスタリカはこれまで、ほとんどの試合でこれらの弱点を、かなり致命的な形で露呈していた。
高い集中力を生んだ守備の意思統一
先の日本戦では、ここまで見事なラインコントロールはできていなかった。ボールを持つ日本の選手に釣り出されてギャップが生まれ、そこを突かれる場面が何度もあった。本大会を迎えるにあたり、DF陣の間でどのような守備をするべきかという意思統一がなされ、限られた時間の中でひたむきに反復練習を行うことで、強豪相手に通用するレベルにまで磨き上げたと考えられる。そして、その守備が機能したからこそプレーに余裕と自信が生まれ、90分間を通じて高い集中力を保つことができた。
強い信頼関係で成り立つ前線からの守備
しかしウルグアイ戦、イタリア戦では、ジョエル・キャンベル、ブライアン・ルイス、クリスティアン・ボラニョスの3トップが前線からプレスをかけ、ダブルボランチのセルソ・ボルヘスとジェルトシン・テヘダが相手の前に立ちはだかって攻撃を遅らせる。そして、複数で囲い込んでボールを奪うという守備戦術が効果を発揮した。隙を突いて的確なタックルを繰り出し、奪ったボールは素早く丁寧につないで一気に攻守を切り替え、得意のカウンターを繰り出す。派手なプレーを見せようとか、個人で目立ってやろうといった色気は見せず、全員が忠実にチームプレーをこなすことによって、見事なまでの機能美が生み出されていた。
1月に負った大ケガが原因でW杯出場を断念し、母国で家族とともに過ごしながら試合を観戦したブライアン・オビエドは、連動した守備が機能した要因として「選手相互の信頼関係」を挙げている。「コスタリカは相手に強烈なプレッシャーをかけ、ピッチ上でエネルギッシュな動きを見せ、それによってゲームをコントロールすることができた。そのようなプレーを続ける上で、信頼関係は大切な要素だ。コスタリカはこの点でイタリアやウルグアイを上回っていた」。オビエドに加え、大会直前には絶対的エースだったアルバロ・サボリオまで負傷で失ったものの、それによって逆に団結力が高まり、強い信頼関係が生まれたのかもしれない。