岡崎慎司、痛感したFWとしての力不足 2試合シュートゼロ…直面した厳しい現実
屈辱感を胸に4年間走り続けてきた
2試合でシュートゼロ。ブンデスリーガで15得点を挙げた岡崎(右)が、W杯で苦しんでいる 【写真:Maurizio Borsari/アフロ】
その屈辱感を胸に、岡崎はこの4年間、懸命に走り続けてきた。11年アジアカップでの活躍を機に、本田や香川真司らとともにザックジャパンの攻撃の軸を担うようになり、重要な得点源として活躍。11年2月に渡ったドイツでもタフな経験を積んだ。今季プレーしたマインツではシーズン15得点を挙げ、1トップで大成功を収めるとともに、目覚ましい成長を遂げた。クラブで苦境に陥っている本田や香川以上に、このブラジル大会では岡崎に期待する声が多かった。
それでも「僕はヒーローになってやろうという気持ちはない。チームが勝つためにやるべきことをやるだけ。クロアチアの(イビチャ・)オリッチが左サイドをやっていたり、ウルグアイの(エディンソン・)カバーニが右だったり、彼らは本来の位置じゃないところでプレーしながら自分を出している。僕もそうなれるように、無我夢中で勝利に向かいたい」と、自己犠牲の精神を前面に押し出した。どこまでも献身的な姿勢を忘れない点取り屋には、今度こそ自分が納得するゴールを奪って、日本の躍進の原動力になってほしかった。
左サイド起用というサプライズ
「1−0になった時、『どうしても勝ちたいから守ろう』と消極的になってしまった。どんな状況でも攻める気持ち、前に仕掛ける気持ちを持ち続けなきゃいけないと改めて言われた感じ。その重要性はW杯じゃないと学べなかった。だからこそ、次は自分たちの攻撃的なスタイルをやり切る覚悟を持って戦わないといけない」
悔しい逆転負けを喫した初戦から3日が経過した17日、彼は努めて冷静にこう語り、闘争心を奮い立たせていた。
裏を突いて、シンプルにゴールを狙う……。
岡崎はギリシャ戦を前に、自分の長所を出すイメージを今一度、頭にたたき込んで、ナタルのエスタジオ・ダス・ドゥナスのピッチに立った。
ところが、彼が最初に陣取ったポジションは右ではなく左だった。アルベルト・ザッケローニ監督は初戦で不振を極めた香川を控えに回し、大久保嘉人を先発起用。大久保を右、岡崎を左というサプライズ采配を見せたのだ。
「相手の右サイドバック(トロシディス)が結構持ち上がってくるというのは言われていたし、そこでハードワークするのと、前回の試合で下がり過ぎたので、もっと深い位置で起点を作るようにということだった。練習で左に入ることはなかったけど、シュツットガルトでもマインツでもやっていたから、基本的に問題ないと思った。自分のサイドハーフというのは、裏を抜ける、引きつけてワンツーをする部分。相手がマンツーマンだったんで、引きつけて誰かをフリーにすることで、また自分がフリーになれる。個人的には自分の色を出そうと思いました」と、彼は自らに託された仕事を忠実にこなすことを第一に考えた。