最高レベルの守備陣を誇るブラジル=W杯を彩る各国注目DF・GK陣を紹介

河治良幸

マルケス率いる3バックでV字復活――メキシコ

ラファエル・マルケスを守備のリーダーにしたことで安定感を取り戻したメキシコ。6大会連続決勝トーナメント進出は、彼らの踏ん張りに懸かる 【Getty Images】

 ブラジルと同じA組のメキシコは北中米カリブ海予選で大苦戦を強いられ、大陸間プレーオフで何とか本大会の切符を手に入れた。しかし、昨年10月に就任したミゲル・エレーラ監督は国民的英雄である大ベテランのラファエル・マルケスを守備のリーダーに復帰させ3バックに変更。これが奏功し、攻守両面に安定感をもたらした。

 マルケスは全盛期ほどのスピードは無いものの、統率力とカバーリングのセンスは相変わらずで、長短を織り交ぜるパスの正確性は後方の司令塔とでも言えるレベルだ。左右を固めるエクトル・モレノとフランシスコ・“マサ”・ロドリゲスも欧州リーグでの経験が豊富で、ワールドクラスのアタッカーを封じ込める素地はある。

 彼らの控えには過去2大会で主力を務めたカルロス・サルシードがおり、高さのある相手に対しては189センチで空中戦に滅法強いディエゴ・レジェスの起用も有効になる。昨年のコンフェデ杯はブラジルに0−2と敗れたが、ロンドン五輪でブラジルを破った当時の五輪代表メンバーも増えており、開催国にひと泡吹かせて6大会連続の決勝トーナメント進出を果たすことも夢ではない。

名将が植え付けた守備組織は随一――ロシア

 個のタレント力は欧州の中級クラスだが、イタリア人の名将ファビオ・カペッロが植え付けた守備の組織力は非常に高く、強豪相手でも容易には崩れないレベルにある。H組をいい形で突破できれば決勝トーナメントでも侮れない存在になるかもしれない。

 DFラインを統率するのは34歳のセルゲイ・イグナシェビッチで、相棒のバシリ・ベレズツキとはCSKAモスクワと代表で長い間コンビを組んでいる。両者ともスピード対応を苦手としているが、右サイドバックにはカペッロがロシアリーグから発掘した俊足のアレクセイ・コズロフ、左サイドに機動力の高いドミトリ・コムバロフを配置することで補完している。

 彼らの背後に構えるのは絶対的な守護神のイゴール・アキンフェエフだ。10代からロシア代表の守護神を任され、広大な守備範囲と的確に間合いを詰めてコースを限定するセービングは目を見張る。CSKAモスクワで在籍10年を超えるが、本人が望めばビッグリーグの強豪クラブでもポジションを狙える逸材だ。

 控えDFにはウラジミール・グラナト、アンドレイ・イェシュチェンコ、アンドレイ・セメノフといった国際的には無名の選手が並ぶが、カペッロ監督が厳選したメンバーだけに、主力をしっかりとバックアップするはず。中でも190センチのセメノフは対人戦に強く、今回の出番次第で注目を浴びうる逸材だ。

守備の踏ん張りで躍進狙える――ナイジェリア

 アフリカ王者として挑んだ昨年のコンフェデ杯でスペインとウルグアイに敗れると、ステファン・ケシ監督は守備の強化をテーマに掲げ、ゴトフレイ・オボアボナを軸にDFラインを構築してきた。右サイドバックのエフェ・アンブローズ、20歳でチェルシーが保有するケネス・オメルオはともにナイジェリアらしい個の強さも光るが、守備陣の距離がタイトになったことで、簡単に間を突破されない組織が仕上がった。

 左サイドバックで安定したパフォーマンスを見せていたエルデルソン・エチエジレの負傷欠場は痛手だが、スピードのあるジェウォン・オシャニワが粘り強くサイドエリアを守ることができれば大きな不安は無くなる。

 何と言ってもナイジェリアにはアフリカ最高GKのビンセント・エニェアマがいる。立て続けのビッグセーブでチームを救い、同時に味方を鼓舞する姿は、国際舞台でも板に付いてきた。前回は彼の頑張りに頼り過ぎる部分があったが、堅実な守備陣を得た今大会で前回と同等のパフォーマンスを見せることができれば、決勝トーナメントがぐっと近づくだろう。

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著者プロフィール

セガ『WCCF』の開発に携わり、手がけた選手カード は1万枚を超える。創刊にも関わったサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で現在は日本代表を担当。チーム戦術やプレー分析を得意と しており、その対象は海外サッカーから日本の育成年代まで幅広い。「タグマ!」にてWEBマガジン『サッカーの羅針盤』を展開中。

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