9cmVに見たジャスタウェイ世界一の凄み 凱旋門賞が射程に入る大きな一歩に

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「ジャスタウェイは凄い。褒めてあげたい」

柴田善も須貝調教師もジャスタウェイを手放しで絶賛 【中原義史】

「最後は間に合わないんじゃないかと思いましたね」
 須貝調教師すら観念しかけたラスト50メートル。しかし、ジャスタウェイは最後の最後まで諦めていなかった。柴田善がゴール前最後の攻防を振り返る。
「追い抜こうという馬の気持ちがすごく強く出ていましたね。馬の力に助けられました」

 レース全体の上がり3ハロンのラップタイムは11秒8―12秒1―13秒8。見ての通り、ラスト1ハロンは究極の我慢比べだ。そして、パトロールビデオを見ていただくとよく分かるのだが、ゴール手前、先頭を走っていたグランプリボスが最後の最後、バテて外に大きくヨレてしまった。グランプリボスにとっては手にしかけていた勝利がスルリと落ちる痛恨の減速となったわけだが、追い抜くことを諦めなかったジャスタウェイは力尽きることなく、この一瞬の隙をついてゴール直前に差し切ってみせたのだ。柴田善が舌を巻いたように、とてつもない勝利への執念と、それを可能にさせる能力である。

「本当にえらい馬ですよ。こんな競馬ができるんですから」
 柴田善が手放しで褒め称えた。どんな馬場であれ負けるわけにはいかなかった、という須貝調教師もホッとひと息をついて、愛馬をこう絶賛した。
「ジャスタウェイは凄いなと思いました。それも内から差したわけですから。褒めてあげたいです」

宝塚記念は「もう少し様子を見てから決断」

凱旋門賞へと突き進むジャスタウェイが見たい! 【中原義史】

 真に強い馬は馬場、天候、展開など何も言い訳にしない――自らの走りでそれを証明してみせたジャスタウェイの今後だが、須貝調教師によれば、上半期を締めくくるグランプリ・GI宝塚記念(6月29日、阪神競馬場2200メートル芝)は、どうやら流動的になる模様だ。
「レース後の息の入りが少し悪かったんです。やはり今日みたいなタフな馬場で勝利するくらいのパフォーマンスを見せた後ですから、もう少し様子を見てから宝塚記念の最終決断をしたい」

 その一方で、さらにその後の秋シーズンについて、トレーナーは一歩踏み込んだ発言をしている。
「これも馬の様子を見ながらになりますが、凱旋門賞を頭に入れてもいいかなと思います。2400メートルという距離については、宝塚記念が物差しになるかなと思いますが、タフな馬場への対応は今日の安田記念がいい経験になったと思います」

 宝塚記念にしろ、凱旋門賞にしろ、すべては今後の体調と結果次第にはなるが、これは期待せずにはいられない。日本競馬界の夢、ファンの夢。世界一のジャスタウェイが、世界一の凱旋門賞を獲りに行く――安田記念の勝利は、その道筋がハッキリと見え始めた大きな第一歩だった。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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