35歳・能見篤史にかかる大きな負担 阪神Vのために残る少々の不安

山田隆道

「あと一歩」で栄冠を逃す近年の阪神

能見も35歳となったが、エースとして2位・阪神を支えている 【写真は共同】

 阪神タイガースのリーグ優勝は、一番近いところで2005年までさかのぼる。当時の主力選手といえば、野手は金本知憲、矢野輝弘(当時)、桧山進次郎、今岡誠、赤星憲広、鳥谷敬、投手は井川慶、下柳剛、福原忍、安藤優也、そして最強リリーフトリオとして一世を風靡(ふうび)したJFK(ジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之)。その前の優勝はそれからわずか2年前の03年だったため、投打の枝葉に多少の違いはあれども、軸は変わっていない。

 なるほど、このメンバーなら強かったはずである。なんといっても、ベテラン・中堅・若手のバランスが良い。特に当時の投手陣には、まだ20代の若き主力が多かった。

 早いもので、あれから8年以上が経過した。その間、阪神は優勝から遠ざかっているわけだが、あと一歩のところで栄冠をつかみかけたことは何度もあった。
 2連覇を目指した06年は中日との熾烈(しれつ)な優勝争いに敗れて2位、翌07年もシーズン終盤に10連勝を記録して一時は首位に立ったものの、最後は息切れして3位。翌08年にいたっては序盤から首位を独走し、7月下旬に早くも優勝マジックを点灯させたにもかかわらず、後半戦に入ると2位・巨人(最大13ゲーム差もあった)の驚異的な追い上げをくらい、ゴール寸前でまさかの大逆転負け。10年も優勝争いを演じ、9月には一時優勝マジックを点灯させたが、最後は覇者・中日に1ゲーム差の2位に終わった。

 思えば、昨年の13年もそうだった。8月末まで首位・巨人に肉薄していたものの、9月に入ると大失速し、結局は巨人に大差をつけられる2位。その後のクライマックス・シリーズでも3位・広島に2連敗を喫し、ファーストステージで敗退したことは記憶に新しい。

“優勝争い”ではなく、“優勝”が見たい

 そして、今季ここまでの阪神である。開幕前の評論家諸氏による下馬評は決して高くなかったが、いざふたを開けてみると打撃陣が予想を覆す好調ぶりで、現在のところ首位・広島に2ゲーム差の2位につけている。開幕前は不安視されていた新外国人・ゴメスの活躍はもちろん、マートンや鳥谷といった従来の主力が額面通りの働きを見せていることも頼もしい。また、開幕直後に故障で離脱した西岡剛の穴を埋めるべく、一番セカンドに定着した上本博紀の大活躍にも胸が躍る。小柄ながらも意外にパンチ力のある、俊足の核弾頭。なんとなく、かつての近鉄・大石大二郎を思い出す。

 阪神ファンとしては、こういった状況に「今季こそは!」という思いを強くして当然だろう。なにしろ、近年の阪神は 先述したように“優勝争いの末の惜敗”という展開があまりに多いため、現状が2位だからといって簡単に好調だと言えないところがある。かつての暗黒時代を思うと、Aクラスに入れるだけでも幸せかもしれないが、こうも準優勝的な結果が多くなると、そろそろ贅沢も言いたくなる。“優勝争い”ではなく、“優勝”が見たいのだ。

能見の左肩に最大の負荷がかかっている現状

 さて、そんな阪神が今季こそ優勝するための課題についてである。冒頭に書いた前回の優勝時と今季のメンバー構成を比較してみると、正直なところ、現状では今季のほうが少し見劣りしてしまう。中でも、特に気になるのは投手陣だ。昨年リーグトップのチーム防御率を誇った阪神投手陣も今季の開幕直後は不安定な状態が続き、途中からはやや持ち直したものの、それでも盤石になったとは言い難い。

 現在の阪神投手陣において、大黒柱のエースは能見篤史だろう。今季ここまでの成績ではメッセンジャーの方が安定しているかもしれないが、エースというのはそういうものではない。首脳陣が今季の開幕投手に能見を指名し、その後も宿敵・巨人戦になると必ず先発させるなど、能見中心のローテーションを組んでいることが、能見がエースたるゆえんである。彼の左肩に最大の負荷がかかっているのだ。

 そう思うと、長いペナントレースを戦っていくうえで心配になってくるのが能見の年齢面だ。現在セ・リーグの首位を走っている広島のエース・前田健太は26歳と若く、その広島を阪神とともに追いかける巨人で、今季の開幕投手を務めるなどローテの軸を担っている菅野智之はプロ2年目の24歳。どちらも体力的には充実している年齢で、自軍を優勝に導くためのフル回転が期待できるが、一方の能見はきょう5月28日で35歳になった。

 この35歳という年齢は、能見以外の現役投手でいうとオリックスの井川慶(7月13日生まれ)、福岡ソフトバンクの五十嵐亮太(5月28日生まれ)が代表的だ。井川は先発、五十嵐はリリーフという違いはあるものの、どちらも20代のころに主戦投手としてフル回転し、現在はベテランとしてもう一花咲かせようとしている投手だ。また、巨人の杉内俊哉(10月30日生まれ)は能見の1学年下の33歳で、今季も貴重な働きを見せているが、それでもソフトバンク時代のような投手陣の大黒柱ではなく、ローテの2番手、3番手といった立ち位置で味のある活躍をしている。すなわち、30代中盤の投手というのは、投手陣におけるベテラン枠として扱われることが多いのだ。

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著者プロフィール

山田隆道

作家。1976年大阪生まれ。早稲田大学卒業。「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」などの小説を発表するほか、大の野球ファン(特に阪神)が高じて「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。現在、文学金魚で長編小説「家を看取る日」、日刊ゲンダイで野球コラム「対岸のヤジ」、東京スポーツ新聞で「悪魔の添削」を連載中。京都造形芸術大学文芸表現学科、東京Kip学伸(現代文・小論文クラス)で教鞭も執っている。

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