35歳・能見篤史にかかる大きな負担 阪神Vのために残る少々の不安
「あと一歩」で栄冠を逃す近年の阪神
能見も35歳となったが、エースとして2位・阪神を支えている 【写真は共同】
なるほど、このメンバーなら強かったはずである。なんといっても、ベテラン・中堅・若手のバランスが良い。特に当時の投手陣には、まだ20代の若き主力が多かった。
早いもので、あれから8年以上が経過した。その間、阪神は優勝から遠ざかっているわけだが、あと一歩のところで栄冠をつかみかけたことは何度もあった。
2連覇を目指した06年は中日との熾烈(しれつ)な優勝争いに敗れて2位、翌07年もシーズン終盤に10連勝を記録して一時は首位に立ったものの、最後は息切れして3位。翌08年にいたっては序盤から首位を独走し、7月下旬に早くも優勝マジックを点灯させたにもかかわらず、後半戦に入ると2位・巨人(最大13ゲーム差もあった)の驚異的な追い上げをくらい、ゴール寸前でまさかの大逆転負け。10年も優勝争いを演じ、9月には一時優勝マジックを点灯させたが、最後は覇者・中日に1ゲーム差の2位に終わった。
思えば、昨年の13年もそうだった。8月末まで首位・巨人に肉薄していたものの、9月に入ると大失速し、結局は巨人に大差をつけられる2位。その後のクライマックス・シリーズでも3位・広島に2連敗を喫し、ファーストステージで敗退したことは記憶に新しい。
“優勝争い”ではなく、“優勝”が見たい
阪神ファンとしては、こういった状況に「今季こそは!」という思いを強くして当然だろう。なにしろ、近年の阪神は 先述したように“優勝争いの末の惜敗”という展開があまりに多いため、現状が2位だからといって簡単に好調だと言えないところがある。かつての暗黒時代を思うと、Aクラスに入れるだけでも幸せかもしれないが、こうも準優勝的な結果が多くなると、そろそろ贅沢も言いたくなる。“優勝争い”ではなく、“優勝”が見たいのだ。
能見の左肩に最大の負荷がかかっている現状
現在の阪神投手陣において、大黒柱のエースは能見篤史だろう。今季ここまでの成績ではメッセンジャーの方が安定しているかもしれないが、エースというのはそういうものではない。首脳陣が今季の開幕投手に能見を指名し、その後も宿敵・巨人戦になると必ず先発させるなど、能見中心のローテーションを組んでいることが、能見がエースたるゆえんである。彼の左肩に最大の負荷がかかっているのだ。
そう思うと、長いペナントレースを戦っていくうえで心配になってくるのが能見の年齢面だ。現在セ・リーグの首位を走っている広島のエース・前田健太は26歳と若く、その広島を阪神とともに追いかける巨人で、今季の開幕投手を務めるなどローテの軸を担っている菅野智之はプロ2年目の24歳。どちらも体力的には充実している年齢で、自軍を優勝に導くためのフル回転が期待できるが、一方の能見はきょう5月28日で35歳になった。
この35歳という年齢は、能見以外の現役投手でいうとオリックスの井川慶(7月13日生まれ)、福岡ソフトバンクの五十嵐亮太(5月28日生まれ)が代表的だ。井川は先発、五十嵐はリリーフという違いはあるものの、どちらも20代のころに主戦投手としてフル回転し、現在はベテランとしてもう一花咲かせようとしている投手だ。また、巨人の杉内俊哉(10月30日生まれ)は能見の1学年下の33歳で、今季も貴重な働きを見せているが、それでもソフトバンク時代のような投手陣の大黒柱ではなく、ローテの2番手、3番手といった立ち位置で味のある活躍をしている。すなわち、30代中盤の投手というのは、投手陣におけるベテラン枠として扱われることが多いのだ。