交流戦限定「全試合DH」の是非 球界に求められる将来への試行錯誤

山田隆道

広島、DeNAの惨敗がセ負け越しの要因だが……

昨年は1試合だけ実現した「5番投手・大谷」。20日の中日戦ではいきなりこれが実現しそうだ 【写真は共同】

 いよいよ今季のセ・パ交流戦が20日に幕を開ける。過去9回の戦績は、ご存じの通りパ・リーグがセ・リーグを圧倒している。セの球団で交流戦優勝を果たしたのは2012年の巨人だけで、あとの8回はパの球団が優勝。リーグ同士の対戦成績でもパがセに負け越したのは09年の1回しかなく、通算でもパの733勝660敗47分と、セを大きくリードしている。

 この結果を見ると、「セよりパの方が強い」と言われても仕方ないだろう。もっとも、セ6球団のうち巨人、中日、阪神は交流戦通算で勝ち越しており、東京ヤクルトも5割に近い勝率(過去2年は勝率3割台だが)のため、残る広島(通算96勝134敗10分)と横浜DeNA(通算89勝145敗6分)の大惨敗がリーグ成績を落としているとも考えられるが、ここ数年はそれを抜きにしてもパの方が優勢だ。今季絶好調の広島が交流戦優勝でも果たしたら、少しは評価が変わるかもしれないが。

好投手を生み出すDH

 さて、そんなセ・パの実力差についてである。もちろん、その理由はさまざまな要素が絡みあった複合的なものなのだろうが、中でもパで採用されている指名打者(DH)制度を大きな要因のひとつに挙げる声は大きい。
 DHのあるパでは、基本的に投手が打席に立つことがないため、投手はピッチングだけに専念できる。また、DHのないセの投手はいくら好投していても、チャンスで打順が回ってくると代打を出されて降板するケースがある。しかし、パの投手はそれがないため、必然的に長いイニングを投げることが多い。首脳陣にしても、パの方が投手を計画的に継投できるだろう。

 これらのことから、セよりもパの方が完投能力の高い好投手が育ちやすいと言われており、それがセ・パの全体的な実力差につながっているという。なお、メジャーリーグでも1997年からナショナルリーグとアメリカンリーグで交流戦(インターリーグ)が実施されているが、その通算成績はDHのあるアメリカンリーグがDHのないナショナルリーグを圧倒している(13年まで10年連続でア・リーグが勝ち越し)。これもまた、DHがあることによるリーグ全体の投手力向上、ひいては野球そのものの実力向上と深く関係しているのかもしれない。

投手・大谷が中軸を打つ……漫画のような光景も

 そんな中、今季のセ・パ交流戦では、そのDH制についてルールが変更されることになった。昨季まではパの主催試合でDHが採用され、セの主催試合では採用されないという、通常のリーグ戦にのっとった形式で行われていたが、今季はそれを入れ替え、セの主催試合でDHを採用、パの主催試合では不採用ということになったのである。これは普段見られない形式の試合をそれぞれの本拠地球場で提供するという一種のファンサービスで、交流戦10年目を記念しての特別企画だという。

 したがって、今季の交流戦ではセの球団が自軍の本拠地球場でDHありのスタメンを組み、パの球団は自軍の本拠地球場で投手を組み込んだスタメンを組むことになる。言うまでもなく、この特別ルールのありがたみを一番実感しやすいのは、北海道在住の日本ハムファンだろう。二刀流で話題の大谷翔平が投手のポジションで打線の中軸(4番は中田翔がいるから厳しいか)に並ぶという、高校野球か野球漫画かといった非日常的な光景を、地元の札幌ドームで拝める可能性があるわけだ。

 このファンサービスが実際どれほどの効果を生むかは別として、理想的な形を目指していろいろなことを試してみるのは良いことだと思う。なにしろ交流戦は今季でまだ10年目という歴史の浅いコンテンツであり、システムが成熟するには早すぎる。期間限定という逃げ道もあるため、試合数や日程面に関しても、もっと実験的な試みを大胆に実行してもいいだろう。結果が思わしくなければ、潔くやめればいいだけのことだ。

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著者プロフィール

山田隆道

作家。1976年大阪生まれ。早稲田大学卒業。「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」などの小説を発表するほか、大の野球ファン(特に阪神)が高じて「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。現在、文学金魚で長編小説「家を看取る日」、日刊ゲンダイで野球コラム「対岸のヤジ」、東京スポーツ新聞で「悪魔の添削」を連載中。京都造形芸術大学文芸表現学科、東京Kip学伸(現代文・小論文クラス)で教鞭も執っている。

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