大津祐樹はVVVに残るのか? クラブは残留希望で来週に話し合いの場

中田徹

プレーオフに苦戦するVVV

今季いっぱいでVVVとの契約が切れる大津。複数のクラブがオファーを出したという噂も 【Getty Images】

 日本との関係も深いVVVフェンローは、1部昇格を目指してプレーオフを戦っている。1回戦の相手はオランダ2部リーグのレギュラーシーズンを2位で終えたドルトレヒトだった。彼らは予算220万ユーロ(3億円弱)という小クラブだが、それでもテクニックと身体能力の高い選手をそろえ、攻撃的サッカーでファンを魅了した。レギュラーシーズンでドルトレヒトは5−0、2−0と5位VVVに連勝していた。

 プレーオフでも両者の力の差は歴然で、5月8日の第1レグは、アウェーのドルトレヒトが3−1で先勝した。

今季で切れる大津の契約

 敗れたVVVにおいて気になるのは大津祐樹の去就だ。大津とVVVの契約は今季いっぱいで切れるのだ。負傷で今季半分以上を棒に振った大津に、VVVはオファーを出すのだろうか。

 ここで今季の大津を簡単に振り返っておこう。昨季のプレーオフでゴーアヘッド・イーグルスに敗れ2部落ちしてしまったVVVに、大津はそのまま残った。ボルシア・メンヘングラートバッハとVVVで過ごした2年間、大津はシーズンを通じて試合に出続けることができなかった。そういう意味では、例えレベルが劣るオランダ2部リーグであっても、主力としてしっかりシーズンを戦いきることを体に染み付かせるには、VVVは良い環境だった。大津はカレン・ロバートが付けた“10番”を引き継ぎ、新シーズンを迎えた。

 左サイドを30メートルドリブルし、相手をショルダーチャージで弾き飛ばしてから決めた10月4日のアルメレ・シティFC戦のゴール。ペナルティーエリア内右角付近で、相手を交わしてからゴールを見ること無く左足を振り抜き、カーブをかけて決めた10月12日のオス戦のゴール。今季の大津は思わず「ゴラッソ」と叫びたくなるようなゴールを決めていた。

 しかし、試合によって調子の波が大きいのも気になった。僕がVVVのハイ・ベルデン会長と「もう少し大津のプレーがコンスタントになると凄いんだけど」という話をしたのは昨年秋ぐらいの時期だった。それでもサッカー選手の目利きとして知られるベルデン会長は「大津の足はまるでヨハン・クライフのようなシェープをしている。スピードとテクニック。大津が持つポテンシャルはものすごい」と大きな期待を口にしていた。

 また、大津自身も「自分一人で打開できる選手になりたい」とオランダ2部リーグの舞台で『個』の力を磨くべく、モチベーションを高く保って戦っていた。しかし12月15日のマーストリヒト戦で大津は右足アキレス腱を切ってしまう重傷を負い、手術とリハビリのため日本へ帰国した。

クラブ会長は「祐樹に残って欲しい」

 プレーオフ第1レグが行われた日、コンコースの人ごみの中ベルデン会長と話す機会に恵まれた僕は、少し世間話をした後、「ここで聞く話しではないな」と思いながらも来季の大津をどうするのかを聞いた。ベルデン会長の答えはこうだった。
「われわれは祐樹がVVVに残って欲しいと思っている。今、VVVはプレーオフを戦っている。それが終わってから来季の可能性をお互いに探り、祐樹と話し合いたい」

 さらにベルデン会長は「ほら、そこに祐樹がいるぞ」と言って、5メートル先を指差した。そこには来季のVVVのコーチ就任が確実視されている藤田俊哉氏らと共に大津がいた。
 最近、3000人台まで減っていたVVVの観客動員だったが、この日は久しぶりに6500人の観衆で埋まっていた。その人ごみの中で大津は「懐かしいですね」と言いながらオランダサッカー独特の雰囲気を楽しんでいた。大津は「今は残るとも、移籍するとも言えませんが、VVVとは来週、話をすることになると思います」と語ってくれた。

 大津に対して複数のクラブがオファーを出したという噂もある。今はただ、大津が悔いの残らぬ選択をし、来季の復活を願うばかりである。
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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