統一球が持つ根本的な問題とは? プロ野球の信頼を揺るがした事態に提言
昨年に続き、プロ野球でまたしても「統一球」に関する問題が起こった。信頼を揺るがす事態だけに、抜本的な解決が求められる 【写真は共同】
メーカーによる差をなくすための反発係数の規定
以前から、ミズノ製ボールは「飛びやすい」と言われていた。それを踏まえ、ミズノは低反発のゴム材を使用したボールを開発し、11年シーズンからの公式球として使用されることになった。その結果、10年シーズンの本塁打数1605本に比べ、11年シーズンの本塁打数は939本と激減した。
プロ野球の公式戦で使用されるボールは公認野球規則によると、「ボールはコルク、ゴムまたはこれに類する材料の小さな芯に糸を巻きつけ、白色の馬皮または牛皮二片でこれを包み、頑丈に縫い合わせて作る。重量は5オンスないし5オンス1/4 (141.7グラム〜148.8グラム)、周囲は9インチないし9インチ1/4 (22.9センチ〜23.5センチ)とする」と決められている。日本野球機構(NPB)では統一球を設定するにあたり、これに加え反発係数を定めた。その数値は0.4134〜0.4374だ。昨年も今年もこの数字が問題となって騒動を巻き起こすことになった。
元セ・リーグ企画部長がNPBに提言
では、統一球にしても反発係数がメーカーによって異なるといったケースが生じなくなってなお、なぜプロ野球はボールの素材を指定するのではなく、反発係数を定めたのだろうか。
「かつては複数社がある程度同じ素材で作っていました。そこに高品質の素材で作るボールメーカーが現れた。プロ野球が素材を指定しなかったのは、そのボールも使用したかったからでしょう。そのために素材の指定ではなく、別の基準を設けたのだと思います」と薙野氏は話す。しかし、素材を指定していないということは、毎年ボールの中身が違ってくる可能性がある。公式球が変わってしまっては、野球の記録、変遷を同じレベルで比較できず、曖昧なものになってしまう。記録を「NPB統一球2013年版」などとするわけにはいかないはずである。薙野氏はこうした懸念から、ボール購入者の立場であるNPBには以下のように注文をつける。
「今回のような事態を避けるためにも、NPBはボールの素材、そして素材の使用割合を指定するべきです」
プロ野球は昨年に続き、統一球に関する問題を起こした。ボールの検査体制の不備や供給メーカー側の問題、そしてNPBのリーダーシップの問題など、さまざまな要因が絡み合った結果と考えられる。こうしたボールを巡る問題はプロ野球の信頼を揺るがす事態に発展している。三たびこのようなことが起こらないよう、抜本的な解決を図ってもらいたいと願ってやまない。
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