現代サッカーの流行を体現するチェルシー ジョゼ・モウリーニョの第二次政権
結果至上主義の“最初の結婚”
2度目となるチェルシーでの指揮にも変化が見られるモウリーニョ 【Getty Images】
就任1年目にチェルシーを50年ぶりにプレミア優勝に導くと、翌年も連覇を達成。それまでプレミアの中堅クラブに過ぎなかったチームを、一気に強豪の地位に押し上げた。しかし、幸せな結婚生活は3年目から亀裂が入り始める。4年目のシーズン途中、モウリーニョは限りなく解任に近い形で監督の座を追われている。
その後、モウリーニョはインテルでCL制覇を成し遂げ、レアル・マドリーへ。レアルでもリーガ優勝を果たすも、3シーズン目にリーグ戦とカップ戦で無冠に終わると、クラブ側との同意で契約を解消。再びフリーになったモウリーニョが“結婚相手”に選んだのは、かつて別れたチーム、チェルシーだった。
「私は常に勉強しているが、あなた方は常に時代遅れだ」
モウリーニョは第一次チェルシーの監督時代、英国メディアにこう言い放ったことがある。傲慢(ごうまん)、不遜……という彼につきまとうイメージは、この頃に定着したといっていい。だが、モウリーニョが「常に勉強している」のは間違いない。それは、今シーズンのチェルシーの戦いぶりを見ても明らかだ。ここでは、モウリーニョの戦術視点でチェルシーを分析していきたい。
顕著に現れた守備ラインの変化
最も分かりやすいのは守備ラインの変化だ。第一次チェルシーでも、インテルでも、強豪と戦うときは自陣ゴール前を固めるのがモウリーニョの基本戦術だった。1トップ以外は全員が引いて、攻撃はロングカウンターにかける。彼のチームが攻撃サッカーの信奉者から「守備的」と揶揄(やゆ)されるのは、そのためだ。
このような守り方は、バルセロナを始めとして、技術やパス回しに優れるチームを相手に有効な手段だと思われていた。実際にインテル時代にはバルセロナを沈めて09−10シーズンのCLを制している。だが、攻撃側のレベルが上がるにつれて、守備ラインを低くする戦術が攻略されるようになっていった。
守備ブロックを固める最大の目的は、DFラインとボランチの間にできる「バイタルエリア」で相手にプレーをさせないことだ。だが、攻撃側の技術レベルが上がるにつれて、ゴール前を固めても狭いスペースでパスを受けられ、打開されることが多くなっていった。