“大迫の穴”埋めずとも快進撃見せる鹿島 セレーゾサッカーの浸透が守備の安定生む

田中滋

“応用”を迫られたFC東京戦では完敗

ナビスコ杯第1節・FC東京戦では若さゆえの“応用”がきかず完敗 【Getty Images】

 オフシーズンに結果が出なかったこともプラスに作用した。このままではまずい、という意識が全員に共有され、チームの危機感は献身的かつ忠実な守備の実行につながった。あおられた危機感が、一丸となって戦うことを導いたのである。

 しかし、それはいわば監督が選手にたたき込んだ基本中の基本。それだけで勝てるほどJの戦いは甘くない。そのことを第3節が終わった時点で予言していたのが、鈴木満強化部長である。「今はセレーゾのサッカーの基礎編を忠実にやっているだけ。いつか応用編が必要になってくる」

 その応用編に迫られたのが3月19日に行われたヤマザキナビスコ杯第1節のFC東京戦だった。3ボランチ気味に守るFC東京はサイドにスペースを空けており、そこに鹿島のSBが攻め上がり、攻撃での特長を発揮することが求められた。

 しかし、献身的にプレーすることである程度の結果を残すことができる守備面とは違い、攻撃面はがんばるだけでは相手を崩すことができない。味方との連携や創造的なアイデアを出せなければ攻撃で特長を発揮するのは難しかった。また、公式戦4試合目で初めて先制されたことで、チームが浮き足立ち、開始10分で2点目を失ってしまったことは若さを感じさせた。

チームがどのような変貌を見せるかに期待

 また第4節のC大阪戦では、守備練習を何度も重ねてきたにもかかわらず、昌子がペナルティエリア内から大きく蹴り出すのではなく胸トラップしたところを相手DF山下達也に奪われ、MF長谷川アーリアジャスールに目の覚めるミドルシュートをたたき込まれ先制を許している。

 応用編を求められたFC東京戦の戦いはある程度仕方がない面もあったが、基礎編を怠るミスが出たことは第3節までは見られなかった。3連勝により良い意味で作用していた危機感が薄れ、若さが悪い方に出てしまったと言えるだろう。

 ところが、第5節の横浜FM戦では、先制されても落ち着いて試合を運び、逆転勝利へとつなげた。

「自分たちのサッカーをやれば絶対に逆転できる」ハーフタイムに監督から檄(げき)を飛ばされた若い選手たちは、果敢に前を向いて仕掛ける姿勢を取り戻し才能の片鱗を見せた。

 チームは、まだ基礎編と応用編を行ったり来たりしており、若い選手は眠らせたままの才能をまだまだ残している。シーズンが終わったとき、このチームの姿がどのような変貌を見せるか現時点で想像することさえ難しい。

<了>

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著者プロフィール

1975年5月14日、東京生まれ。上智大学文学部哲学科を卒業。現在、『J'sGOAL』、『EL GOLAZO』で鹿島アントラーズ担当記者として取材活動を行う。著書に『世界一に迫った日』など。

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