「規格外」の能力を持つモンスター 福西崇史のボランチ分析 Y・トゥーレ編
元日本代表の福西崇史氏がブラジルW杯で注目のボランチを紹介。今回はコートジボワール代表のヤヤ・トゥーレを分析する 【Getty Images】
僅差の戦いが予想される中、とりわけ勝敗の鍵を握ることになりそうなのがボランチの出来だ。これまでW杯を制したチームには必ずと言っていいほど優秀なボランチを擁していた。今大会もイタリアのアンドレア・ピルロ、スペインのセルヒオ・ブスケツ、そして日本と同じグループに入ったコートジボワールのヤヤ・トゥーレら、さまざまなタイプの選手のエントリーが予想される。攻守の要となるポジションだけに、彼らの出来がチームの浮沈を左右するといっても過言ではない。
そこで、日本代表のボランチとしてW杯に2回出場した経験を持つ解説者・福西崇史氏にブラジル大会で注目の上記3人のボランチを分析してもらった。ボランチを見る楽しみを知れば、W杯がもっと面白くなるはずだ。
ピッチの中央で放つ圧倒的な「存在感」
191センチのヤヤ・トゥーレがピッチの中央に立っていると、何だかピッチが小さくなったような錯覚を感じる。この「存在感」というのはボランチにとって重要な要素だ。
ボールを持って攻め込もうとしたとき、ヤヤ・トゥーレが目の前にいたら、突っ込んでいくのを躊躇(ちゅうちょ)してしまうだろう。「アイツのところに近寄りたくない」と思わせることができれば、ボランチにとっては戦う前から勝ったようなもの。相手は自然と中央を避けてサイドにボールを運ぶので、守る側としては展開が読みやすくなる。
リーチの長さとフィジカルを生かした守備
もしもパスを通されてしまうと、攻撃の起点を作られてしまうのでリスクもあるのだが、自分なら触れるという自信があるのだろう。クサビのパスをカットできれば、相手は前掛かりになるのでカウンターに持っていきやすい。
リーチの長さは高い位置からのプレッシャーにも発揮される。相手陣内に押し込んだ状態でボールを奪われたとき、前を向いてボールを受けた選手に寄せて縦パスのコースを消して横パスを出させる。ヤヤ・トゥーレが寄せていなければ、カウンターを食らっていたというシーンでも未然に防ぐシーンを見ることが多い。
センターバック(CB)としてプレーすることもできるぐらいの守備力があり、とにかく当たりに強い。イーブンのボールの競り合いになったときは、まず負けない。というより、相手の身体を吹っ飛ばしてしまう。世界で最もフィジカルコンタクトが強いと言われるプレミアリーグの中でも、その強さは際立っている。