「規格外」の能力を持つモンスター 福西崇史のボランチ分析 Y・トゥーレ編

北健一郎

元日本代表の福西崇史氏がブラジルW杯で注目のボランチを紹介。今回はコートジボワール代表のヤヤ・トゥーレを分析する 【Getty Images】

 ワールドカップ(W杯)・ブラジル大会の開幕まで2カ月を切った。各国が世界一の座を狙い、4年に1度の祭典に照準を合わせている。今大会でも多くのドラマが見られることだろう。

 僅差の戦いが予想される中、とりわけ勝敗の鍵を握ることになりそうなのがボランチの出来だ。これまでW杯を制したチームには必ずと言っていいほど優秀なボランチを擁していた。今大会もイタリアのアンドレア・ピルロ、スペインのセルヒオ・ブスケツ、そして日本と同じグループに入ったコートジボワールのヤヤ・トゥーレら、さまざまなタイプの選手のエントリーが予想される。攻守の要となるポジションだけに、彼らの出来がチームの浮沈を左右するといっても過言ではない。

 そこで、日本代表のボランチとしてW杯に2回出場した経験を持つ解説者・福西崇史氏にブラジル大会で注目の上記3人のボランチを分析してもらった。ボランチを見る楽しみを知れば、W杯がもっと面白くなるはずだ。

ピッチの中央で放つ圧倒的な「存在感」

 個人的に世界で最も能力の高いボランチだと思っているのが、マンチェスター・シティとコートジボワール代表でプレーするヤヤ・トゥーレだ。この選手には「規格外」という言葉が当てはまる。

 191センチのヤヤ・トゥーレがピッチの中央に立っていると、何だかピッチが小さくなったような錯覚を感じる。この「存在感」というのはボランチにとって重要な要素だ。
 ボールを持って攻め込もうとしたとき、ヤヤ・トゥーレが目の前にいたら、突っ込んでいくのを躊躇(ちゅうちょ)してしまうだろう。「アイツのところに近寄りたくない」と思わせることができれば、ボランチにとっては戦う前から勝ったようなもの。相手は自然と中央を避けてサイドにボールを運ぶので、守る側としては展開が読みやすくなる。

リーチの長さとフィジカルを生かした守備

 そしてプレー面では、まずリーチの長さとフィジカルの強さを生かしたディフェンスに目がいく。ドリブルで突っ込んできた相手に対して、わざと身体の横にボールを通させて、からめとるようにボールを奪いとる。普通の選手であれば抜かれている間合いであっても、ヤヤ・トゥーレの場合はリーチが1.5倍ぐらいあるので届いてしまう。クサビのパスコースをわざと空けておいて、パスが出た瞬間にヌッと足を出してカットしてしまうのもヤヤ・トゥーレの得意技だ。

 もしもパスを通されてしまうと、攻撃の起点を作られてしまうのでリスクもあるのだが、自分なら触れるという自信があるのだろう。クサビのパスをカットできれば、相手は前掛かりになるのでカウンターに持っていきやすい。

 リーチの長さは高い位置からのプレッシャーにも発揮される。相手陣内に押し込んだ状態でボールを奪われたとき、前を向いてボールを受けた選手に寄せて縦パスのコースを消して横パスを出させる。ヤヤ・トゥーレが寄せていなければ、カウンターを食らっていたというシーンでも未然に防ぐシーンを見ることが多い。

 センターバック(CB)としてプレーすることもできるぐらいの守備力があり、とにかく当たりに強い。イーブンのボールの競り合いになったときは、まず負けない。というより、相手の身体を吹っ飛ばしてしまう。世界で最もフィジカルコンタクトが強いと言われるプレミアリーグの中でも、その強さは際立っている。

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著者プロフィール

1982年7月6日生まれ。北海道旭川市出身。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、放送作家事務所を経てフリーライターに。2005年から2009年まで『ストライカーDX』編集部に在籍し、2009年3月より独立。現在はサッカー、フットサルを中心に活動中。主な著書に「なぜボランチはムダなパスを出すのか?」「サッカーはミスが9割」(ガイドワークス)などがある。

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