ソチに見た障害者スポーツ発展への課題=東京パラリンピックに生かすために

宮崎恵理

障害者スポーツ支援システムの構築を

圧倒的な強さを見せたロシア。男子座位ではバイアスロン12.5キロなど3種目で表彰台を独占した 【Getty Images】

 一方、4年前のバンクーバー大会で2個の金メダル、1個の銀メダルを獲得した日本のクロスカントリースキー/バイアスロン陣だが、今大会は競技初日に行われたバイアスロン男子座位の久保恒造(日立ソリューションズ)の銅メダル1個に終わった。

 圧倒的な強さを見せたのは地元ロシアだ。久保と同じ男子座位では、バイアスロン12.5キロ、15キロ、クロスカントリースキー15キロの3種目でロシアが表彰台を独占。最終日に行われた10キロフリーの男子立位では、1位から5位までがロシア勢だった。

 男子座位で今大会6個もの金メダルを獲得したロマン・ペトゥシコフは、前回のバンクーバー大会ではクロスカントリースキーで銀メダル1個、バイアスロンで銅メダル1個だったが、わずか4年で、ロシアをけん引するスーパースターとなった。ロマンに、ロシアの強化、成長の理由を尋ねると、
「ロシアチーム全体が、必死で練習をしてきた、ということだけは言える。その練習方法や内容については、口外できない」
 と、かたくなな答えが返ってくるばかりだ。

「ロシアでは、選手はもちろんですが、スタッフ、コーチが非常に高い報酬を得ながら、国家的予算を投入して4年間、育成・強化システムをしっかり構築してきました。これが、今大会大きな成果につながりました。翻って日本では、障害者スポーツに関しては、各競技団体単体、あるいはコーチ、選手個人の努力に負うところが大きい。それだけでは、どうしても限界があります。今大会、アルペンスキーでも、クロスカントリースキー(バイアスロン)でも、高校生選手が初出場しています。彼らをロシア並みに強化・育成していくためには、やはり国の政策の一環として、障害者スポーツを支援するシステムの構築が急務だと思います」
 長年、クロスカントリースキーで選手発掘から育成・強化に携わってきた日本代表の荒井秀樹監督は、今大会の結果を受けて、こう語った。

 昨年9月、2020年東京五輪・パラリンピック開催が決定した。決定後初となるソチ大会は、東京開催に向けた第一歩となる大会と、日本選手団は位置づけている。ソチパラリンピックの結果は、今後の障害者スポーツの発展に、どのように生かされていくのか。まさに、新たなスタートラインとなった大会だった。

<了>

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著者プロフィール

東京生まれ。マリンスポーツ専門誌を発行する出版社で、ウインドサーフィン専門誌の編集部勤務を経て、フリーランスライターに。雑誌・書籍などの編集・執筆にたずさわる。得意分野はバレーボール(インドア、ビーチとも)、スキー(特にフリースタイル系)、フィットネス、健康関連。また、パラリンピックなどの障害者スポーツでも取材活動中。日本スポーツプレス協会会員、国際スポーツプレス協会会員。著書に『心眼で射止めた金メダル』『希望をくれた人』。

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