アーセナルはやはり今季も勝てないのか? 苦手な大一番が続く「勝負の3月」

寺沢薫

CL敗戦でヨーロッパの冒険を終える

アーセナルはバイエルンの牙城を崩せず。批判を浴びたのはまたもエジルだった 【Getty Images】

 本拠地エミレーツスタジアムでの初戦を0−2で落とし、敵地で迎えたチャンピオンズリーグ(CL)・ベスト16の第2戦。「ミッション・インポッシブル」という言葉が戦前のメディアでちらほら見られたが、やはりアーセナルはバイエルンに勝てなかった。第1戦は、開始直後に猛攻を仕掛けたが、メスト・エジルのPK失敗を境にトーンダウンし、GKボイチェフ・シュチェスニの退場で勝負が決まってしまい完敗を喫した。

 1−1で引き分けた第2戦も、ボール支配率はアーセナルの36%に対し、バイエルンが64%。パス成功本数はアーセナルが290本に対し、欧州王者は650本と半分以下だった。それでも「勇敢なドロー」(『BBC』)と敵地での健闘を称える声もあり、多少の誇りは守った。だが、「もっと野心を示し、猛攻を仕掛けるべきだった」(『ガーディアン』)など、やはり期待外れを嘆く声が多く、アーセナルはほろ苦い形でヨーロッパでの冒険を終えることになった。

非難が集中するエジル

 この試合では、またしてもエジルに非難が集中した。右サイドで先発したエジルはハーフタイムでベンチに下げられており、アーセン・ベンゲル監督は「ハムストリングを負傷したため」と説明したが、英国メディアの判決は無情だった。

「エジルにとって忘れられない対戦。彼はホームでPKを外し、アウェーではかろうじてボールに触る程度でハーフタイムに代えられた。ケガをしたというが、言い訳に聞こえる」(『ザ・サン』)

「理解されず、怠惰なエジル。4250万ポンド(約73億円)のエジルはドイツサッカー史上最も高価な輸出品だが、ミュンヘンでのパフォーマンスを見た後なら2シリング(約20円)も払わない」(『デイリーメール』)

「疲れきったように見えてスピードもなく、とてもおとなしい夜だった」(『インデペンデント』)

「またしても」と書いたのは、“エジル批判”が今に始まったことではないからだ。シーズン序盤は今季最高の買い物と言われたが、年明け以降は一気に存在感が希薄になったエジルについて、元ドイツ代表MFディートマー・ハマンはプレミアリーグにウィンターブレイクがないことを挙げて「かなり疲れているように見える」と語った。だが他にも、「スピード不足」(『スカイスポーツ』)や「劣勢になると戦う姿勢が見られない」(『BBC』)こと、バイエルンとの第1戦でPKを外した後に「自信を失って消えてしまった」(BBC)メンタルの弱さなど、指摘される問題点はさまざまだ。

 そして、最も懸念されているのが「ビッグゲーム・トラブル」。2月に『ITV』が掲載した記事では、アーロン・ラムジーのゴールをアシストして2−0で勝利した11月2日のリバプール戦以外、11月10日マンチェスター・ユナイテッド戦(0−1)、12月14日マンチェスター・シティ戦(3−6)、12月23日チェルシー戦(0−0)、2月8日リバプール戦(1−5)、2月12日マンチェスター・ユナイテッド戦(0−0)と、プレミアのビッグマッチではことごとく「冴えないし怠惰」なプレーに終始していると批判されている。

毎年の恒例行事「ビッグゲーム・トラブル」

 こうしたエジルへの批判は、今のアーセナルというチーム全体を要約するものでもある。3月1日、ストーク・シティに0−1でまさかの敗戦を喫した後には「ベンゲルのチームが目のくらむようなパスマスターたちを誇るのは結構だがスピードが足らない」(『スカイスポーツ』)という意見も見られたし、大一番で実力を発揮できないことが騒がれるのはエジル加入前から毎年の恒例行事と言ってもいい。彼だけでなく、今季ここまで12ゴールのエース、オリビエ・ジルーも先ほど挙げたビッグゲーム6試合でノーゴールだ。

 基本的には安定している守備陣も、大一番で突如として崩壊してしまうきらいがある。アーセナルがプレミアの歴史で1試合5失点以上を喫した試合は過去4回しかないが、なんとそのうち2試合が今季のゲームで、それはマンチェスター・シティ戦と、開始20分で4点をたたき込まれたリバプール戦だ。11失点を喫したこの2試合を除けばプレミア26試合17失点(1試合平均0.65失点)と立派な数字を残しているだけに、チーム全体の「ビッグゲーム・トラブル」は顕著だ。アーセナルOBのマーティン・キーオンも、「王者には王者の風格が必要だ。アーセナルはビッグゲームでもっと戦えないといけない」(『デイリーメール』)と古巣を心配している。

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著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、株式会社フットメディア(http://www.footmedia.jp/)在籍時にはプレミアリーグなど海外サッカー中継を中心としたテレビ番組制作に携わりながら、ライター、編集者、翻訳者として活動。ライターとしては『Number』『フットボリスタ』『ワールドサッカーキング』などに寄稿する

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