アーセナルはやはり今季も勝てないのか? 苦手な大一番が続く「勝負の3月」

寺沢薫

悔やまれるウォルコットとラムジーの不在

モウリーニョに「失敗のスペシャリスト」とやゆされたベンゲル。勝負の3月で巻き返すことはできるか 【Getty Images】

 CLの敗退により、9シーズンぶりとなるタイトル獲得の望みはプレミアリーグとFAカップだけになった。準決勝で2部ウィガンと戦い、勝てばハル・シティと3部シェフィールド・ユナイテッドの勝者と決勝を争うことになるFAカップは、またとない優勝のチャンスを迎えている。リーグでも、ここ6試合でわずか2勝(2敗2分け)と著しく調子を落としているとはいえ、前半戦の貯金があるため、10試合を残して消化試合がひとつ多い首位チェルシーと勝ち点7差と、優勝は十分に狙える位置だ。

 3月は「ビッグゲーム・トラブル」改善のラストチャンス。トッテナム戦(アウェー)、チェルシー戦(アウェー)、マンチェスター・シティ戦(ホーム)という3つのビッグマッチを控えており、ここでシーズン序盤に見られた“全方位型”の攻撃を取り戻せるかどうかがカギになる。

 最近の不調は先に挙げたエジルのスランプも大きな要因だが、一方で「エジルにはスピードのあるランナーが必要。セオ・ウォルコットとラムジーの不在が悔やまれる」(『ガーディアン』)というように、1月の移籍でストライカーを獲得しなかったことにより、エジルのパスをゴールにつなげるスコアラーがジルーしかいない現状を指摘する声もある。スピードスターのウォルコットは1月に左膝前十字じん帯を断裂して今季絶望。さらに、前半戦でゴールを量産したラムジーも、年末に負った太腿のケガが長引いてもう2カ月以上ピッチに立てていない。彼らの不在がチームから攻撃の迫力を奪ってしまった。

復調した選手たちが勝負を分ける!?

 幸い、ラムジーは次節(3月16日)トッテナム戦での復帰が予定されており、ここにきてアレックス・オックスレイド=チェンバレンやサンティ・カソルラ、トマシュ・ロシツキーといったMFたちも調子を上げてきているのは心強い。

 特にチェンバレンは、バイエルンとのCL第2戦で「自信を持ち、勇敢で、ボールを要求し、奇跡を起こすためには何が必要かをよく理解していた」(『テレグラフ』)と高く評価された。各紙採点でエジルが軒並みチーム最低評価を受けたのと対照的に、チェンバレンはアーセナルのベストプレーヤーの座を独占したのだ。シーズン前半戦をケガで棒に振った20歳はウインガーだが、2月2日のクリスタル・パレス戦ではセントラルMFとして果敢な飛び出しから2ゴールを決めるなどチームに不足していたピースを補ってみせている。

 ベテランで故障も多いロシツキーはフルシーズンの活躍こそ望めないが、ベンゲルが誰よりも信頼するテクニシャンで、昨季も3月以降に要所で攻撃に違いをもたらした。チェンバレンと同じく前半戦はケガに泣いたカソルラも徐々にゴール数を伸ばしており、3月の勝負どころでモノを言うのは、復帰するラムジーも含めた彼らの活躍になるかもしれない。

 大手ブックメーカー『ウィリアムヒル』でアーセナルのプレミア優勝オッズは17倍。チェルシー(1.83倍)、マンチェスター・シティ(2.75倍)はおろか、リバプール(6倍)にも水をあけられてしまったが、まだオッズを変動させるチャンスはある。昨季のアーセナルは、今季と同じCLベスト16でバイエルン相手に敵地で2−0と勝利した3月13日の第2戦の後、プレミアではラスト10試合で8勝2分けと快進撃を見せ、いい形でシーズンを終えている。今季もその再現ができたなら、無敗優勝を達成した2003−04シーズン以来となるリーグ優勝もまだ実現不可能ではない。

 CLの舞台からは姿を消したが、アーセナルにとって「勝負の3月」はこれから。ジョゼ・モウリーニョに「失敗のスペシャリスト」と馬鹿にされたベンゲル監督には、まだ彼を見返すチャンスが十分にあるのだ。

<了>

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著者プロフィール

1984年、東京都生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、株式会社フットメディア(http://www.footmedia.jp/)在籍時にはプレミアリーグなど海外サッカー中継を中心としたテレビ番組制作に携わりながら、ライター、編集者、翻訳者として活動。ライターとしては『Number』『フットボリスタ』『ワールドサッカーキング』などに寄稿する

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