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“甲府方式”運営は地方クラブの見本
奇跡の甲府再建・海野一幸会長 最終回

エンブレム・ロゴの訴訟が和解で決着

試合に勝利したあと満面の笑みでスタッフと握手する海野会長
試合に勝利したあと満面の笑みでスタッフと握手する海野会長【写真:ヴァンフォーレ甲府】

 2月17日、ヴァンフォーレ甲府のエンブレムとロゴをめぐり、商標権の名義人がクラブの営業権譲渡代金の支払いとエンブレム・ロゴの使用の差し止めを求めて起こした訴訟で和解が成立した。


 甲府は1億2000万円の和解金を支払い、商標権を譲り受ける。「ノドに刺さっていた小骨がようやく取れた感じがする」と甲府の海野一幸会長は胸をなで下ろす。

「この問題が円満に解決したことで、山梨のサッカー界の方々もホッとしているはず」


 商標権をめぐる争いは、経営危機を乗り越え、じわじわと成長してきた甲府が長きにわたって思い悩まされてきた難題だった。

訴訟の発端は97年の法人化の際に起こった

 このこじれた問題を解き明かすには歴史をかなりさかのぼる必要がある。ヴァンフォーレの前身は1965年に甲府一高のOBチームとして創設された「甲府クラブ」。72年に日本リーグ2部に昇格、さらに時を経て、Jリーグを目ざすことになった。95年にチーム名を「ヴァンフォーレ甲府」に変えている。


 Jリーグ参入には法人化が義務付けられている。そこで97年2月、山日YBSグループ、山梨県、甲府市、韮崎市の出資をあおぎ、甲府クラブを発展的に解消する形で運営会社「ヴァンフォーレ山梨スポーツクラブ」を設立した。


 その際、旧クラブから新会社の深澤孟雄社長に「営業権を2億4800万円で新会社に買ってもらいたい」との申し入れがあった。しかし、営業権は新会社に帰属しているものであり、要望にはとても応えられない。株主総会で承認されるものでないことは明らかだった。


 ただし、旧クラブが金融機関に2億円を超える債務を負担していること、商標権の名義人が旧クラブの代表者であることから、新会社は解決策として、旧クラブの借入金の1年間の利息に相当する約1000万円を商標の年間使用料として当分支払うことにした。


 新会社と旧クラブは商標権の使用に関する契約を締結。ところが、この契約書に「将来、新会社に商標権を買う余力ができたら2億4800万円で購入する。そのように努力する」という旨の一文が入っていた。

14年度は赤字も次のステップへ踏み出す

 旧クラブは、この契約書の一文を盾に「2億4800万円が支払われていない」と主張し、2009年になって東京地方裁判所に訴訟を提起し、営業権の売買代金の支払い、もしくは営業権と商標権の侵害による損害賠償を求めた。


 しかし、商標権を将来、新会社が2億4800万円で購入するよう努力すると取締役会で議論されたことはなかった。そもそも営業権は設立当初より新会社に帰属しているもの。商標権についても使用料を支払っているため、旧クラブが主張する損害賠償が成立するものではないことは明らかだった。


 商標権については旧クラブに帰属しているが、その買い取り契約について役員会で議決はされていない。契約書の一文も「将来の売買の成立に向けて努力する」というものであり、2億4800万円での売買契約が成立しているものではなかった。


 裁判は4年に及んだが、甲府は「毎年、約1000万円の使用料を払い続けるより商標権を適正な価額で買い取れるなら買い取った方がよい」と判断し、その方針で解決することで交渉を続けてきた。


 その結果、商標権の譲渡代金及び今後旧クラブは一切の権利を主張しない事の和解金として1億2000万円を支払うことで和解した。旧クラブに融資していた2つの金融機関の協力があったことも、和解の成立に影響した。


 甲府は01年から黒字経営を続けてきたが、和解金の支払いにより14年度は赤字となる見込みだ。しかし、もやもやとしていた問題をクリアしたことで、クラブは次のステップに踏み出せる。

吉田誠一(日本経済新聞社)

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