田中将のスプリッターは“魔球”となるか

杉浦大介

まずは好内容でスタート 監督も笑み

上々の“プレビュー公演”を終えた田中。次は現地6日に登板予定だ 【写真は共同】

「まるでワールドシリーズ第7戦のよう」とジョークも飛んだ豪華継投の中でも、最大の注目を浴びたのが“3番手投手”だったことは言うまでもない。

 現地3月1日、田中将大がフィリーズとのプレシーズン戦でヤンキース・デビュー。C.C.サバシア、黒田博樹の後を受けてマウンドに立つことなど、これから先もプレシーズンかプレーオフ以外ではあり得ないのではないか。試合地のタンパから遠く離れたニューヨークでも話題を呼んだ“プレビュー公演”で、最新の呼び物はまずは申し分のない立ち回りを披露してくれた。

 2回で32球を投げて、2安打、無失点、3三振。速球は最速94マイルを計時し、2本のヒットも詰まり気味だった。バットは9度も空を切り、三振はすべて空振りだったことが示す通り、支配的と呼ぶに近い内容だったと言って良い。
「真っすぐの制球が良かったし、スプリッターも同じだ。普段は多投するわけではないカーブも投げていて、試してみようというアイデアも良い。私は(今回の投球を)喜ばしく思っているよ」
 この日の一戦を生中継した『YESネットワーク』のインタビューに応え、ジョー・ジラルディ監督も満足そうな笑顔でそう語っていた。

地元メディアからも好評

 もちろんこの時期の結果を見て、大げさに騒ぎ立てるべきでないのは事実である。ある程度の経験がある主力打者は、開幕の時期に照準を合わせて徐々にスイングスピードを上げていくもの。メジャー1年目ということで田中は早めに仕上げている感があるし、そもそも相手側に情報が絶対的に不足しているだけに、春先は特に有利な立場にある。
 ただそれでも、3月でも、4月でも、10月でも、打たれない方が本人も周囲も気分は良いのは当然。何より、今回はテレビ観戦した筆者にも、初登板の緊張や必要以上の高ぶりはほとんど見えなかった。堂々としたマウンドさばきに、あらためて好印象を抱いたファン、メディアは多かったのではないか。
『ニューヨーク・デイリーニューズ』、『ニューヨーク・ポスト』といった地元のタブロイド紙も、登板翌日には田中の写真をスポーツ面の表紙に掲載。記事内には慎重な見方を促す論調もあったが、やはりポジティブな分析も多かった。
 「田中はフィリーズを力でねじ伏せ、驚かせた」(ESPN.com)、「田中は正しい資質を持っている」(ニューヨーク・デイリーニューズ)といった見出しを見ても、まずは好スタートを切ったと捉えられていることは伝わってくる。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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