田中将のスプリッターは“魔球”となるか

杉浦大介

スプリッターが最大の武器に

最大の武器スプリッター。メジャーの舞台で「慣れても打てない」魔球となるか 【写真は共同】

「莫大な期待に応えるために、やはりスプリッターが頼りになっていくのかもしれない。打者が慣れていくにつれて(打ち取るのが)難しくなるだろうことは田中も認めている。それでも、速球のように見えて、目の前で沈む彼のスプリッターに適応するのは難しいはずだ」

 一連の地元紙の報道内で、筆者がほぼ全面的に同意するのは、デイリーニューズ紙のジョン・ハーパー記者のそんな記述である。
 95マイル以上の速球を投げる投手がゴロゴロいるメジャーでは、田中もある程度は変化球に頼る場面も出てくるだろう。特に一部から“地球上最高のスプリッター”と大げさに表現されるスプリット・フィンガード・ファストボールは、彼にとって最大の武器であり、生命線になっていくに違いない。
 その評判高い球種に打者がどんな反応を示すかを楽しみにしていたが、フィリーズ戦で投じられたのは3球のみ。同僚のサバシアや対戦したドモニク・ブラウンは切れ味に感嘆したというが、まだあまりにもサンプルが少な過ぎる。
 これから先に登板を重ねる中で、田中のスプリッターに対するバッターのリアクションに注目していきたい。ただ空振りするだけでなく、その動きに打者たちが驚いたような表情でも見せるようであればしめたもの。そのときには、多少の時間が経っても適応は難しいはずである。

「慣れても打てない」魔球となるか

 近年ではヨハン・サンタナのチェンジアップ、ブラッド・リッジのスライダー、あるいはマリアーノ・リベラのカッターのように、独特の軌道を描くがゆえに、「慣れても打てない」魔球はメジャーにも存在してきた。
 田中のスプリッターがそれほどの決め球だったとしたら、アメリカン・リーグ東地区の勢力地図は変わりかねない。そこまででなくとも、近いレベルだったとすれば、ヤンキースの巨額投資もある程度は正当化される。こればかりはしばらく時間が経たないと答えは出ないが、興味はそそられる。

 次の登板が予定されるのは、3月6日(日本時間7日)のフィリーズ戦――。同じ相手との2度目の対戦で、日本のエースが投じる“伝家の宝刀”は、今度はどんな効果を発揮することになるのだろうか。

<了>

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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