木田優夫の現在〜挑戦を続ける理由〜「10年後もマウンドで投げていたい」

ベースボール・タイムズ

独立リーグの存在価値と新たな楽しみ

ラミレス入団で盛り上がりを見せる独立リーグ。木田もNPB復帰、そして野球の魅力を多くの人に広めるため、今日もマウンドに上がる 【写真は共同】

 選手としてマウンドに立ち続けながら、GMとしてチームの強化、そしてリーグ全体の発展に尽力する。そんな木田にとって、うれしいニュースが飛び込んできた。2月13日、ヤクルト、巨人で活躍し、昨季限りで横浜DeNAを戦力外になったアレックス・ラミレスが独立リーグ、BCリーグの群馬ダイヤモンドペガサスに入団することが明らかになった。

「1月の終わりに都内で会った時は、全然そんな話はしてなかったんですけどね。でも、米国では珍しくない。メジャーの契約を取れなかったら独立リーグで『俺はまだできるぞ』ということを証明して、またメジャーに戻ってくるという選手を何人も見てきた。だからラミレスもそんなに特別なことをしているという意識はないと思いますよ。自分自身では『まだできる』と思っていても周りがそう思ってない時は、実際にプレーして証明するしかないですからね」

 決して余生を過ごすために独立リーグに身を置く訳ではない。NPBでの契約をつかみ取るためにプレーする。そして自分の力を証明する舞台があることは、そのまま独立リーグの存在価値につながっている。選択肢を増やし、裾野を広げる。それは選手にとって、日本野球界全体にとって、非常に重要なことだ。

「去年は大塚(晶則)が入ったり、大家(友和)が入ったり、うちのチームには吉田えりが入ってきたり。BCリーグの話題が増えるということは、日本の独立リーグにとって大切なことだと思うので、今回、ラミレスが来てくれたのはうれしいですね。その上で、リーグ全体が発展していくためには、各球団の経営がしっかりしないと続けていけない。実際に米国では新しい球団ができては消滅してというのを繰り返しているので、日本はそうならないようにしないといけない。社会人チームが少なくなって来ている現状では、独立リーグが衰退してしまうと日本の野球界全体が小さくなってしまいますからね」

 野球界全体を俯瞰しながらも、久々となるラミレスとの直接対決に早くも心を躍らせる。
「対戦するのは久しぶりですね。たぶん僕がヤクルトにいてラミちゃんがジャイアンツにいた時以来かなぁ。日本ハムの時に交流戦で対戦しているかも知れないですけど……。でも僕、前にデッドボールをぶつけた気がするんですよね。今度はビシッと抑える? いや、またぶつけちゃうかもしれないですよ(笑)」

木田優夫の10年後は?

 野球だけに留まらず、その愛すべきキャラクターで、これまでもさまざまな分野で多彩な才能を発揮してきた。ファンからの声援は常に大きい。そして励みになっている。だが、誰よりも木田自身が、「木田優夫」という男の可能性を信じている。

「いつもそうなんですけど、ファンの人以上に僕が僕自身に期待しちゃうんですよね。これは(明石家)さんまさんの影響なのかもしれないですけど、自分が楽しめるかどうかというのが一番なんです。僕が楽しんでいない野球を、ファンの人が見て楽しめるはずはない。そういう気持ちでやってます」

 ドラ1右腕、メジャーリーガー、画伯、営業、GM……。数々の呼び名を持つ「DAKY」(木田のニックネーム)――。10年後は一体、何をしているのだろうか。
「希望を言えば、10年後でもマウンドで投げていたい。でもそれは現実的に難しいと思うので、僕が経営しているシアトルのお店で皿洗いをしてるかもしれないですね(笑)。でも本当、先のことは分かんないですよ。だって僕みたいなピッチャーは30代中盤でボールが行かなくなって、引退して、次の仕事を見つけて、結婚して……。自分でもそうなると思っていたんですよ。だから『現役の間は結婚しない』とかも言ってたんです。だけど、野球を続けているせいで自分の人生設計がボロボロというか、どんどん自分の思っていたこととは違うことになってるんです(苦笑)。だから先のこと、10年後のことなんて今はまったく分からないです」

 自らが“虜”になった、野球――。その魅力、楽しさを多くの人に味わってもらいたい。そう願うと同時に、所属や肩書を変えながら木田優夫自身が、他の誰よりも野球を楽しんでいる。楽しいから、辞められない。

<了>

(三和直樹/ベースボール・タイムズ)

3/3ページ

著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント