ペップ・スタイルで勝利したバルセロナ。シティ沈黙し、難攻の要塞エティハド陥落
バルセロナのボールポゼッションは62%。試合を支配し、メッシのPKによる先制点も必然の流れから生まれた 【Getty Images】
イニエスタが左ウイングに“復帰”
シティは今シーズン、ペジェグリーニ監督が就任し、ポゼッションサッカーに舵を切った。プレミアでは25試合68得点とリーグ一の得点力を武器に、優勝争いを演じている。プレミア最強のボランチコンビと称されるヤヤ・トゥーレ、フェルナンジーニョが中盤を見張り、ヘスス・ナバス、シルバ、ネグレドのスペイントリオが攻撃を仕掛けていく。空中戦になればセンターバックのコンパニーが強さを発揮する。バルサといえども、真っ向勝負を仕掛けたら危ない。
シティ戦、バルサの狙いは「できるだけボールを失わずにプレーすること」。それはスターティングラインナップの時点で明らかだった。これまでマルティーノ監督は3トップの両サイドに、ネイマール、ペドロ、アレクシス・サンチェスという、スピードと突破力に優れたアタッカータイプを起用してきた。
だが、このシティ戦で左ウイングに入ったのは本来MFのイニエスタだった。イニエスタの役割はいわば“偽ウイング”。左ウイングの位置に縛られるのではなく、自由に中央のスペースに入ってきて、セスク、シャビ、ブスケツとともに“4人目のMF”としてプレーする。さらに、メッシもセンターFWの位置から中盤に下がってくる。中盤での数的優位を作ることによって、ボール保持率を高める。
これはリーグ戦でのバルサの戦い方とは若干異なるものだ。マルティーノ監督の就任以降、バルサのポゼッション率は低下傾向にあった。リーガ5節のラージョ・バジェカーノ戦では317試合ぶりに相手チームにポゼッションで下回ったこともあった(結果は4−0で勝利)。「バルサのスタイルを変えるつもりはない」と言いながらも、実際には、ボール保持にこだわり過ぎるのではなく、ゴールに直結する縦方向へのボールや、ドリブルによる仕掛けをするように意識付けを行ってきた。
深さと幅を作る「ペップ流」
しかし、今シーズンのリーグ戦では、ペドロが17試合13得点、サンチェスが18試合15得点、新加入のネイマールも12試合7得点と、ウイングがフィニッシュに絡む回数が飛躍的に増えた(メッシは15試合13得点)。むしろ、メッシがアシスト役としてウイングを生かすシーンが頻繁に見られるようになった。メッシありきで組み立てられていた昨シーズンまでならあり得ないことである。
だが、シティ戦のバルサはまるで“グアルディオラのチーム”だった。自分たちがボールを常に持ち続けることで、相手をピッチから消してしまう。どんなに優れたアイデアを持っていても、屈強な肉体があったとしても、ボールがなければ何もできない。この日のバルサはシティのヤヤ・トゥーレ、シルバ、ヘスス・ナバスといったスターたちにほとんど仕事をさせなかった。