ペップ・スタイルで勝利したバルセロナ
シティ沈黙し、難攻の要塞エティハド陥落
バルセロナのボールポゼッションは62%。試合を支配し、メッシのPKによる先制点も必然の流れから生まれた
バルセロナのボールポゼッションは62%。試合を支配し、メッシのPKによる先制点も必然の流れから生まれた【Getty Images】

 チャンピオンズリーグの決勝トーナメント1回戦第1レグ、マンチェスター・シティvs.バルセロナは、2−0でバルセロナが制した。先制点は後半9分、メッシがシティのDFデミチェリスに倒されて得たPKを自ら決めたもの。さらに試合終盤にダニエウ・アウベスがネイマールとのワンツーから2点目を挙げて突き放した。アウエーゴールを2点決めたことによって、バルサがベスト8進出へ大きく前進した。

イニエスタが左ウイングに“復帰”

 最大の勝因はバルサがシティ用に戦い方を“微調整”したことにあった。


 シティは今シーズン、ペジェグリーニ監督が就任し、ポゼッションサッカーに舵を切った。プレミアでは25試合68得点とリーグ一の得点力を武器に、優勝争いを演じている。プレミア最強のボランチコンビと称されるヤヤ・トゥーレ、フェルナンジーニョが中盤を見張り、ヘスス・ナバス、シルバ、ネグレドのスペイントリオが攻撃を仕掛けていく。空中戦になればセンターバックのコンパニーが強さを発揮する。バルサといえども、真っ向勝負を仕掛けたら危ない。


 シティ戦、バルサの狙いは「できるだけボールを失わずにプレーすること」。それはスターティングラインナップの時点で明らかだった。これまでマルティーノ監督は3トップの両サイドに、ネイマール、ペドロ、アレクシス・サンチェスという、スピードと突破力に優れたアタッカータイプを起用してきた。


 だが、このシティ戦で左ウイングに入ったのは本来MFのイニエスタだった。イニエスタの役割はいわば“偽ウイング”。左ウイングの位置に縛られるのではなく、自由に中央のスペースに入ってきて、セスク、シャビ、ブスケツとともに“4人目のMF”としてプレーする。さらに、メッシもセンターFWの位置から中盤に下がってくる。中盤での数的優位を作ることによって、ボール保持率を高める。


 これはリーグ戦でのバルサの戦い方とは若干異なるものだ。マルティーノ監督の就任以降、バルサのポゼッション率は低下傾向にあった。リーガ5節のラージョ・バジェカーノ戦では317試合ぶりに相手チームにポゼッションで下回ったこともあった(結果は4−0で勝利)。「バルサのスタイルを変えるつもりはない」と言いながらも、実際には、ボール保持にこだわり過ぎるのではなく、ゴールに直結する縦方向へのボールや、ドリブルによる仕掛けをするように意識付けを行ってきた。

深さと幅を作る「ペップ流」

 ペップ・グアルディオラ、その後のビラノバ体制において、バルサのウイングは「深さと幅を作ること」が最大の役目となっていた。ほとんどボールが回ってこなかったとしても、サイドの高い位置に張り続けることによって、相手のDFラインをコントロールし、中盤がパスを回すためのスペースを作り出す。その結果、ウイングの影は薄くなり、メッシの引き立て役になったビジャはアトレティコ・マドリーへと去って行った。


 しかし、今シーズンのリーグ戦では、ペドロが17試合13得点、サンチェスが18試合15得点、新加入のネイマールも12試合7得点と、ウイングがフィニッシュに絡む回数が飛躍的に増えた(メッシは15試合13得点)。むしろ、メッシがアシスト役としてウイングを生かすシーンが頻繁に見られるようになった。メッシありきで組み立てられていた昨シーズンまでならあり得ないことである。


 だが、シティ戦のバルサはまるで“グアルディオラのチーム”だった。自分たちがボールを常に持ち続けることで、相手をピッチから消してしまう。どんなに優れたアイデアを持っていても、屈強な肉体があったとしても、ボールがなければ何もできない。この日のバルサはシティのヤヤ・トゥーレ、シルバ、ヘスス・ナバスといったスターたちにほとんど仕事をさせなかった。

北健一郎

1982年7月6日生まれ。北海道旭川市出身。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、放送作家事務所を経てフリーライターに。2005年から2009年まで『ストライカーDX』編集部に在籍し、2009年3月より独立。現在はサッカー、フットサルを中心に活動中。主な著書に「なぜボランチはムダなパスを出すのか?」「サッカーはミスが9割」(ガイドワークス)などがある。

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