ペップ・スタイルで勝利したバルセロナ。シティ沈黙し、難攻の要塞エティハド陥落

北健一郎

狙われたヤヤ・トゥーレ

元チームメイトのヤヤ・トゥーレを狙って“包囲網”を敷き、ショートカウンターで攻め立てた 【Getty Images】

 もう一つ、この試合の勝因として攻撃から守備への切り替えのスピードと、献身的なプレッシングを挙げたい。バルセロナには「5秒ルール」というものがある。攻撃が失敗して相手にボールが渡ったとき、そこから5秒間は全力でボールを奪い返しに行く。華麗なパス回しばかりにスポットライトが当たるが、バルサのポゼッション率の高さは、ボールを失った後のリカバリーとセットになっている。

 象徴的だったのは後半10分〜11分にかけてのプレーだ。シティのヤヤ・トゥーレがバルサゴールに背を向けてボールを持ったところへ、シャビが前を向かせないように寄せていく。トゥーレが長いリーチを生かしてターンしようと試みるが、そこに前線のサンチェス、メッシが加わってコントロールミスを誘った。

 そこからバルサは1分間にわたってシティのゴールに波状攻撃を仕掛けた。シティのDFが身体を張って跳ね返しても、すぐさまバルサの選手がプレッシャーをかけてマイボールにしてゴールに向かっていく。1点目で満足することなく、そこから畳み掛けたことが試合終盤の2点目につながった。

自分たちのスタイルを貫けなかったシティ

 シティの苦戦の要因はどこにあったのか。

 ペジェグリーニ監督は試合前、「われわれはスタイルを貫く」と語っていたが、実際には慎重な入り方を選択した。左サイドハーフにナスリではなく本来サイドバックのコラロフを起用したのも、シティの「スタイル」であるボール保持率を高めるサッカーよりも、ディフェンスからのカウンターに重きを置いていたことの表れだろう。だが、ディフェンシブな入り方をしたことがバルサのボール保持率を高め、シティにとって裏目に出たことは否めない。

 何よりもアグエロの欠場は大きかった。バルサのセンターバック、とりわけピケはスピードに弱点を抱えている。ネグレドはポストプレーで攻撃の起点になっていたが、アグエロのようにカウンターで裏に飛び出せるスピードはない。前半18分にシルバのパスからネグレドがシュートを放ったシーンも、もしもアグエロだったらスピードで振り切ってゴールネットを揺らしていたかもしれない。

「世界最高のチームになるには、バルセロナのような強いチームを倒さなければならない」(ヤヤ・トゥーレ)

 カンプノウでバルサを相手に2点差以上をつけて勝利するというハードルはかなり高い。だが、それを乗り越えない限り、シティが“世界最高のチーム”になることはできない。「われわれは諦めずにトライする」というペジェグリーニ監督の頭の中には、どんなプランが描かれているのか。

<了>

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著者プロフィール

1982年7月6日生まれ。北海道旭川市出身。日本ジャーナリスト専門学校卒業後、放送作家事務所を経てフリーライターに。2005年から2009年まで『ストライカーDX』編集部に在籍し、2009年3月より独立。現在はサッカー、フットサルを中心に活動中。主な著書に「なぜボランチはムダなパスを出すのか?」「サッカーはミスが9割」(ガイドワークス)などがある。

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